年金シニアプラン総合研究機構メールマガジン No.39(2022/4/27)
2022/04/27 (Wed) 11:00
年金シニアプラン総合研究機構 メルマガ
No.39 (2022/04/27)
ご愛読、誠にありがとうございます。
本メールマガジンは、これまで年金シニアプラン総合研究機構とご縁のある皆様にご送付させていただきました。
ご不要の際はどうかご海容下さるようお願い申し上げます。
ご購読を直ちに中止なさる場合は、誠に恐縮ですが、下記のURLからお手続き下さるよう伏してお願いいたします。
https://w.bme.jp/bm/p/f/tf.php?id=nensoken&task=cancel
目次
1.年金シニアプラン総合研究機構の動き(2022/03/22~04/26)
(1) 人事情報
(2) 当機構の理事長候補者の公募開始
(3) Web Journal「年金研究」第19号を発刊
(4) 「第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の成果を公表
(5) 当機構理事長 高山憲之へのインタビュー記事掲載(読売新聞)
(6) 年金調査研究レポートの公開
(7) 第7回ユース年金学会の開催予告
2.年金ライフプランセミナー:
・ライフプランセミナー開催支援のご案内
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1.年金シニアプラン総合研究機構の動き(2022/03/22~04/26)
(1) 人事情報(2022/04/01)
本年4月1日付けで、当機構に以下の人事異動がありました。
・総務企画部長 宮田晴美
・総務企画部職員 菅原由美子
・研究部主任研究員 長野誠治
(2) 当機構の理事長候補者の公募を開始いたしました(2022/03/30)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220330rijichokobo-1.pdf
(3) Web Journal「年金研究」第19号を発刊しました(2022/03/30)
Web Journal 年金研究 No.19, 2022年3月
特集:第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査
https://www.nensoken.or.jp/publication/nenkinkenkyu/
●サラリーマンの生活と生きがいに関する調査:特集にあたって 高山憲之
●サラリーマンのワークライフバランス ―その影響要因と階層構造― 神原理(査読つき論文)
【要旨】
本稿では、サラリーマンのワークライフバランスに焦点をあて、その影響要因(因果関係)と構造、及び、そこから導き出される課題を明らかにした。因子分析の結果、ワークライフバランスに影響を及ぼす主要因は、「就労環境」や「積極的な生活姿勢」であり、特に「仕事への満足度」が重要な存在であることが明らかになった。クラスター分析からは、「Clu01.低バランス層(30-40代、未婚率が高く、世帯収入と金融資産が少ない)」「Clu02.中バランス層(Clu01.とClu03.の中間値にある層)」「Clu03.高バランス層(50-70代、既婚率が高く、世帯収入と金融資産が多い)」という3層構造の存在が浮き彫りとなった。サラリーマンの間で「ワークライフバランスの階層化」が生じている。
●女性のライフコースの多様化と老後の所得保障 ー「モデル年金」指標の有効性を問うー 丸山桂(査読つき論文)
【要旨】
本研究は、公的年金制度の財政検証の指標として採用されている「モデル年金世帯」が、実際の女性の就業経験や家計状況とどの程度まで乖離が生じているのかを検証するために、第3号被保険者世帯を中心に、家計や老後の生活への備え、および元専業主婦世帯の老後の家計について、分析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。
1)モデル年金世帯に相当する、第3号被保険者で一度も就業経験がないという者の割合は、若年世代になるほど低い傾向にある。そのため、モデル年金の給付水準は財政検証の指標としては意義があっても、個々人に関する老後の生活設計の指標として使用するには限界がある。
2)第3号被保険者の世帯収入や金融資産、老後への備えの状況は、かなり多様化している。第3号被保険者が自身で加入できるようになったiDeCo(個人型DC)への加入率は低く、老後の資産形成手段はもっぱら預金や保険などの従前からある金融商品が活用されていることが、「サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」から分かった。また、第3号被保険者世帯における「老後の備えを何も行っていない」という回答割合は、夫婦がともに第2号被保険者である世帯よりも高かった。
3)高齢期において夫の公的年金収入が家計収入に占める割合は、過去における妻の経歴が専業主婦中心であった世帯の方が、正社員・非正規労働者を含めた共働き世帯よりも高い傾向があった。2019年財政検証で、マクロ経済スライドによる公的年金の給付水準の低下は、年金給付額における基礎年金収入の割合が相対的に高い世帯に、より深刻な影響を与えることが示されており、低所得の専業主婦世帯では、寡婦になった際の生活困窮リスクが一層高まり、女性の貧困問題をさらに深刻化させる可能性がある。
4)現役世代の第3号被保険者について、1)就業経験があるが現在無職である者、2)一度も働いたことがない者、3)現在就業している者、の三者を分ける要因について分析を行った結果、年齢や学歴、世帯収入などを調整すると、現在就業していない第3号被保険者が過去に就業経験があるか否かを分ける決定的な要因は見いだせなかった。他方で、第3号被保険者が現在就業しているか否かについては、未就学の子どもの存在、健康状態、性別役割分業観が関連することが明らかとなった。また、有配偶の女性非正規労働者については、厚生年金加入者の方が第3号被保険者よりもコロナ禍での仕事・職場への満足度が高い傾向になることが分かった。
モデル世帯の所得代替率(給付水準)は、公的年金財政検証の指標として有効であっても、国民にとっては、自身の老後の生活設計には適さないことに留意すべきである。十分な就業期間が残された比較的若い世代にこそ、高齢期の公的年金、自身の就業、資産形成などの多様な手段について適切な情報を提供すべきである。また、高齢期の貧困問題に公的年金制度、社会保障がどう対応すべきかの検討も急がれる。
●現役世代の生きがいとメンタルヘルス -階層、ライフイベント、資産形成に注目して 大風薫(査読つき論文)
【要旨】
すべての年代において生きがいが生き方を見直す重要な視点になっている。このことを踏まえ、本稿では、35歳から64歳の現役世代男女がどの程度、どのような生きがいを持っているのか、生きがいと階層・ライフイベント・資産形成の関わり、そして、生きがいとメンタルヘルスの関係について検討した。得られた結果は以下の通りである。
1)現役世代は65歳以上の高年世代に比べて生きがいを持たない割合が高く、生きがいの対象数も少ない。生きがいの主な対象は、男性では「仕事」、女性では「家族・家庭」「ひとり気まま」である。
2)生きがいの保有や生きがいの対象には階層による格差がある。高学歴や高収入層は「仕事」や「家族」が生きがいの対象だが、階層が低い場合は、「友人」や「SNSによる交流」、「ひとりで気ままに過ごすこと」を生きがいとしている。 3)自発的でない理由による退職経験は生きがいを損なう一方、自己の成長やキャリアアップにつながる自発的な理由による退職経験は生きがいをもたらす。
4)男性は、家族や自己の成長になるライフイベントを経験している場合、生きがいを持ちやすい。他方、女性は、自分の生活を大きく調整せざるを得ないイベントを経験している場合、生きがいを持ちにくくなる。
5)預貯金・保険商品・NISAによる資産形成は生きがいを高めることと関連しており、資産形成行動はメンタルヘルスの良好さと関係している。
本稿では、人生の充実期とみなされ、生きがい研究やライフコース研究において従来あまり注目されてこなかった中年を含む現役世代に注目し、生きがいの規定要因や生きがいとメンタルヘルスとの関係を明らかにしてきた。現在の現役世代の場合、高年世代になっても現在の高年世代ほどの生きがいを得ることは難しいおそれがあるものの、資産形成行動が生きがいやメンタルヘルスの向上につながる可能性はある。生きがいとの関わりの中で資産形成を位置づける適切なコミュニケーションが求められる。
●サラリーマンの生活と生きがい(資産形成と生きがいの関係):第7回『サラリーマンの生活と生きがいに関する調査』の調査結果 菅谷和宏(査読つき論文)
【要旨】
過去30年間において、サラリーマンの生きがい保有率は第2回調査時(1996年)の78.4%から一貫して低下し、2021年の第7回の調査では4割を切り、39.9%(前回比▲3.7%)まで低下した。また、生きがいを「持っていない」とする回答が、第1回調査時の13.1%から26.7%まで増加し、生きがいの喪失者が増大していた。
定年退職後の生活の質(QOL )を維持し、豊かな生活を送るために必要な3つの要素として、「健康の維持・増進」「経済基盤の確保」「生きがいの保有」が必要とされる。ちなみに、第2回調査(1996年)の結果を踏まえて、「将来の生活設計がしっかりできている人ほど将来の生活に不安が少なく、定年退職後に生きがいを持って生活しており、将来の生活設計をしっかり持つことが大切である」と指摘しておいた。2019年に老後資金2000万円問題が提起され、資産形成の機運が高まりつつあるが、平均寿命が延伸し、高齢期の生活期間が長期化する中、定年退職後の生活基盤を確保するためには、若い頃からの生活設計(ライフプラン)と、将来に向けた資産形成の準備が必要である。
本稿では、第7回調査時における第2号被保険者(3929人)について、資産形成と生きがいとの関係について分析している。 人生100年時代の到来を迎える中、高齢期の生活期間は長期化し、必要な生活費も増加している。若い年齢からの高齢期に向けた資産形成の重要性が増している。しっかりした経済基盤を構築することが、生きがいのある生活に繋がるだろう。
●サラリーマンとその妻にとっての生きがいと生活満足度 福山圭一(査読つき論文)
【要旨】
第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査のデータに基づき、生きがい保有が生活満足度とどのように関連しているかといったことなどを探るための分析を行った。生きがいの対象ごとに生きがい保有率を見ると、「社会活動(ボランティアを含む)」を挙げた者の生きがい保有率が高く、「ひとり気ままにすごすこと」を挙げた者の保有率が低かった。そこで、全般的な生活満足度及び各生活満足度について、本調査のテーマである生きがい保有のほかに、社会参加の程度、生きがいの対象に「ひとりで気ままにすごすこと」を挙げたかどうかを加え、また、年齢、年収、資産額など本調査で把握可能な回答者の属性を説明変数とする重回帰分析を行った。この結果、生きがい保有の極めて大きい影響力が観測された。充実した生活が満足度の高い生活であるとすると、そのために生きがいが大切であることを明確に示すものと言える。また、社会参加の重要性も確認された。年収や資産額は満足度を上昇させる。生きがいの対象に「ひとりで気ままにすごすこと」を挙げた者の満足度は低下する。年齢が高いほど満足度が高い。サラリーウーマンは男性サラリーマンに比べて満足度が高い。子どもがある世帯の妻は満足度が低い。持ち家があると満足度が高い。定年を経験したか50歳以上で退職を経験した者や完全退職した者は現役に比べ満足度が高い。生きがい保有と各満足度との間では、熱中できる趣味、精神的ゆとり、社会の役に立つこと、家族の理解・愛情、仕事のはりあいといった項目で特に生きがいの保有率が上昇し、逆に、時間的ゆとりでは生きがい保有率が減少する。生きがいを持つことと生活満足度との間に強い関連性があることが明らかになった今回の分析結果は、生きがいを持つことが充実した生活を送るために大切であるとする年金ライフプランセミナーに対し、1つのエビデンスを提供するものと言えるだろう。
●サラリーマンの生活と生きがいの変化(時系列分析):第1~7回『サラリーマンの生活と生きがいに関する調査』の調査結果 菅谷和宏(査読つき論文)
【要旨】
本稿では、1991年の第1回調査から2021年の第7回調査までの30年間にサラリーマンの生活と生きがいがどのように変化してきたかを、人口動態・経済環境・雇用環境の変化とともに分析した。生きがいの保有率は、第2回調査(1996年)の78.4%から一貫して低下してきており、今回の調査では、ついに4割を切り、39.9%(前回比▲3.7%)まで低下した。また、生きがいを「持っていない」とする回答が、第1回調査の13.1%から26.7%まで増加し、生きがいの喪失が伺われた。「生きがいを得られる場」に関する回答は、前回までは「家庭」が凡そ60%台で推移、「仕事・会社」は一貫して減少傾向にあったが、今回は「家庭」が50%台に減少、「仕事・会社」は初めて増加に転じた。
「仕事・就業」の満足度も今までは減少傾向にあったが、今回は、ほぼ全ての項目で増加に転じていた。これは、65歳までの高齢者の「雇用確保措置」(2006年4月及び2013年4月施行)や70歳までの「就業機会の確保措置」(2021年4月施行)により、高齢者の雇用が増加し、定年延長や高齢者の雇用改善により、高齢者の賃金と地位などの処遇が改善していることが要因と考えられる。今まで、生きがいの要素として「仕事」は一貫してその役割が縮小してきたが、平均寿命の延伸と労働力人口の減少などの人口・社会・雇用環境の変化により、再び、「生きがいの要素」や「生きがいの場」として「仕事」の割合が高まっていくことが予測される。今後の動向への注視が必要である。
一方、生きがいの対象は「他人との関係」から「個人」へと変化しており、社会や他人とのつながりを求めず、「ひとりの時間」に生活の満足を見いだそうとしている状況が伺われる。
生きがいの意味や内容は加齢とともに変化し、また、男女でも生きがいの意味・内容は異なる。「社会との関係性」を保ち、「周囲から必要とされ」、「自らの達成感を得られる」ことが、生きがいの保有につながる。生きがいを持ち続けられる社会の枠組みが必要であり、それが今後における日本の超高齢化社会への対応とその活性化にもつながるだろう。
●サラリーマンの生活と生きがいの変化(団塊の世代を追って):第1~7回『サラリーマンの生活と生きがいに関する調査』の調査結果 菅谷和宏(査読つき論文)
【要旨】
1991年の第1回調査から2021年の第7回調査までの30年間におけるサラリーマンの生活と生きがいの変化について調べた結果、生きがいの保有率は、第2回調査時(1996年)の78.4%から一貫して低下しており、第7回の調査では、ついに4割を切り、39.9%(前回比▲3.7%)まで低下した。また、生きがいを「持っていない」とする回答が、第1回調査時の13.1%から26.7%まで増加し、生きがいの喪失者が増大していた。
このような中、生きがいの保有率は「団塊の世代」に関するかぎり、第1回調査時から前回の第6回調査時まで59.0%と、同程度の水準を維持していた。本格的に就業から引退した後も、他の世代と異なって生きがいを持ち続け、「経済的ゆとり」を持ち、仕事に代わる「趣味」などに生きがいを見いだしている団塊の世代がいた。前回調査から5年が経過し、団塊の世代は後期高齢者と呼ばれる一歩手前の72~74歳となった。団塊の世代は今回の調査でも変わらず、高めの生きがいを保有し続けていたのだろうか。本稿では第1回調査時(40~44歳)から第7回調査時(70~74歳)まで、団塊の世代のコーホート(cohort)を抽出し、生活と生きがいの変化を調べた。
その結果、驚くことに、団塊の世代において「生きがいの喪失」が見いだされた。これは、高齢化に伴い、自らの健康や家族などの「生きがい」の目標が失われたためだったと推測される。ただし、今回調査の結果については、2020年に発生した新型コロナウイルスの影響下で、趣味や友人との交流が失われたなどの特殊要因があったことも考慮する必要がある。
人によって生きがいは様々であるが、生きがいの対象を何に求めるのかが重要となる。健康や家族のようにいずれ失われるものだけではなく、時が経過しても、なくならないものに生きがいを見いだすことができれば、生きがいを持ち続けることができる。その答えの一つが「社会・地域」ではないだろうか。加齢とともに生きがいの対象を変えていくことも求められよう。
●第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査:調査の目的と方法 平河茉璃絵
【要旨】
本調査は定年移行期前後におけるサラリーマンの生活と生きがいの関連を分析し、これらの人々に対する退職後の生活に向けた支援策や、生きがいを持った生活ができる政策の提言に結びつけることを目的としている。
本調査は平成3年(1991年)から5年ごとに実施してきた。今回は第7回目の調査である。継続的に調査を実施することによって、社会情勢や経済環境が変わり、世代の移り変わる中で、サラリーマンの生活と生きがいに関する考え方がどのように変化してきたかを、明らかにする。今回調査では過去6回の調査との継続性を維持しつつ、新型コロナウイルス流行による職場環境の変化や、近年のインターネット利用者の増加によるネットワークコミュニティの発達と生きがいとの関連を明らかにするために、調査項目を追加した。その他、消費行動、キャリア形成、老後の資産形成行動の違い等と生きがい保有との関連について、分析できる項目を追加した。
調査は次の方法で行われた。(1)調査対象地域は全国、(2)調査形態はインターネット調査、(3)調査対象者は35~74歳の厚生年金被保険者、厚生年金受給者、共済年金受給者及びそれらの配偶者であり、合計4998人、(4)実施時期は2021年8月19日から8月24日。
●第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査:調査結果の概要及び男女別・年齢階層別比較 平河茉璃絵、山本進
【要旨】
本稿では、35~74歳の第2号被保険者の男女と第3号被保険者の女性を対象にして実施した「第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の結果を、男女別及び年齢階層別に比較した。得られた主たる知見は、次のとおりである。 第1に生きがいとは「生きる喜びや満足感」「心の安らぎや気晴らし」「生活の活力やはりあい」であると考える人が多い。そのような生きがいを持つ人の割合は、65歳以上の男女では5割以上であるが、64歳以下の男女では3割から4割強にとどまる。生きがいに感じることは、男性では「趣味」、女性では「子ども・孫・親などの家族・家庭」が多い。生きがいを感じる場としては、全体として「家庭」という回答が多く、64歳以下の第2号被保険者男女では「仕事・社会」という回答も多い。その一方、「どこにもない」という回答も2割前後ある。
第2に、これから先の楽しみがないという回答者の割合は35~44歳で30%台半ばであるが、年齢が高いほど低下する。代わりに、時期は不明だが楽しみがあるという回答割合が年齢とともに上昇する。また、1年以内に楽しみがある人の割合は概ね2割前後であるが、35~44歳の若い年齢階層と55~64歳の第2号被保険者では、その割合がやや多い。55~64歳の第2号被保険者は定年退職等を控え、その後の生活を楽しみに感じている可能性がある。
第3に、生活の満足度については、「健康」「時間的ゆとり」「経済的ゆとり」「精神的ゆとり」「家族の理解・愛情」「熱中できる趣味」ほか2項目では総じて満足度が高い一方、「仕事のはりあい」ほか5項目では「どちらともいえない」が多い。満足度の高い項目では、年齢が高いほど満足度は高まる傾向にある。
自由時間については、45歳以上の男女では「テレビ・ビデオ・ラジオ・新聞」、35~44歳の男性では「ひとりで趣味・スポーツ・学習など」、35~44歳の女性では「インターネット・SNS」に使うという回答が多い。なお、35~44歳の第2号被保険者の女性は、その34.3%が「自由時間が不十分である」と感じている。
経済的ゆとりに関連して、まず、現在の暮らし向きについては4~5割が「普通」と回答しているものの、「少し苦しい」「とても苦しい」が「少し楽だ」「とても楽だ」を上回り、年齢が若いほど、その傾向が顕著である。5年前と比べると、「変わらない」が5~6割、「暮らし向きが悪化している」のは2~3割、残り1~2割は暮らし向きが改善している。また、自由に使えるお金については、概して「旅行・レジャー」「外食」「衣服・服飾品」に使うことが多い。年齢が高まるほど「旅行・レジャー」「友人・知人・恋人との交流」「家族との交流」に多くのお金を費やす傾向がある。
働く目的については、大多数が「収入を得ること」と回答している。次いで「人との関わりや社会との接点をもつこと」という回答も多い。なお、仕事のはりあいへの満足度とは異なり、仕事の満足度に関しては総じて「やや満足している」という回答が多く見られた。ただし、54歳以下の第2号被保険者の男性の場合、「どちらともいえない」という回答が最多であった。
家族の理解・愛情に関連して、まず、配偶者・パートナーとの関係は概ね良好となっている。ただし、54歳以下の第2号被保険者の女性は家事負担への不満が比較的強い。男女とも女性の家事分担割合が大きいと考えているものの、具体的な分担割合の認識にはギャップが存在し、自身の分担割合を大きく評価している可能性がある。また、18歳以上の非同居の子どもについて、そのような子どものいる者の過半数は年1、2回以上の交流があり、6~7割前後は回答者の自宅から「ふだんの交通手段で1時間以上」の場所に子どもが居住しているが、回答者の年齢が高いほど居住場所が近づく傾向が見られた。
仕事の満足度と配偶者・パートナーとの関係については、新型コロナウイルス流行による影響も調べたが、双方とも「変わらない」という回答が大多数であった。ただし、配偶者・パートナーとの関係については、相手のポジティブな面を従来より強く意識する人がいた一方、家事負担への不満をより一層強く意識するようになった人もいる。また、仕事の満足度については、賃金の満足度が低下したものの、休暇の取りやすさや家庭と仕事の両立の満足度が上昇したという回答がやや多く見られた。
第4に、退職後の生活については、第2号被保険者の男女とも本人の意向として4割前後が現職退職後も可能であれば仕事を継続したいと考えている。しかしながら配偶者・パートナーに対しては、男性の概ね5割前後、女性の6~7割前後が現職退職後に就労を望んでいる。55~64歳の4割前後は、生活設計について配偶者・パートナーとまったく話し合っていない。
(4) 「第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の成果を公表しました(2021/03/31)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220331pressrelease.pdf
●論文(当機構ウェブジャーナル『年金研究』第 19 号に掲載):
https://www.nensoken.or.jp/publication/nenkinkenkyu
●本件の概要についてのスライド資料:
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220331gaiyou.pdf
(5) 当機構理事長 高山憲之へのインタビュー記事が読売新聞に掲載されました(2022/03/30)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220331095947.pdf
2022年4月から年金制度の一部が変更となります。そのことを踏まえて行われた当機構理事長(高山憲之)に対するインタビューの記事が同年3月30日付けの読売新聞朝刊(23面の社会保障欄)に掲載されました。
(6) 年金調査研究レポート「最近のウクライナ情勢とESG投資について-ロシアのウクライナ侵攻後の論説のサーベイと長期投資の観点からの考察-」(杉田健)を公開しました(2022/04/14)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/rr_r04_01.pdf
【要旨】
2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻に伴い、ESG投資について様々な論稿が公表されているが、本稿はそれらをサーベイするとともに、長期投資である年金資産運用の観点から論評するものである。ESG投資には様々な種類があるが、論稿が主に念頭に置いているのはネガティブ・スクリーニングである。論稿はESG投資の是非に関するもの、ESG投資の運営に関するもの、ESG投資の効果に関するもの、に分類できる。ESG投資の是非については、ESG投資は破綻したというものもあればESG投資の意義が増したというものもある。また、ESG投資の運営に関しては、化石燃料関連産業・原子力産業・防衛産業・カントリー・リスクについての議論がある。ESG投資の効果に関しては、ESG投資の観点から早めにロシア関連を外しておいてよかったという成功体験もあれば、天然ガスは環境負荷が軽いのでロシアのエネルギー産業に多く投資していて、今回責任投資の観点から撤退したというものもある。
これらの論稿について、以下のように評価および考察する:
・ロシアのウクライナ侵攻で批判の矢面にさらされているのはESG投資の手法のうちネガティブ・スクリーニングであって、ESG全般ではない。
・ESG投資のパフォーマンス評価は何を基準とするかで変わってくるが、既存の指標への追随を目標とする場合に、指標内容の変更による後追いのリスクには留意すべきである。
・ESG投資を長期で考えれば、ロシアのウクライナ侵攻による影響は一過性のものである可能性がある。
・カントリー・リスクについては、独裁色の強い国を株式投資および債券投資の対象から外しておく方がリスクは少ない。
キーワード:ESG、ウクライナ、化石燃料、原子力、防衛産業、カントリー・リスク、後追い
(7) 第7回ユース年金学会の開催予告(2022/03/16)
https://pension-academy.jp/youth/pdf/07/2022_youthyokoku.pdf
大学学部生のゼミや研究グループが一堂に会し、年金に関する発表を行っていただく機会として、2016年11月からユース年金学会を開催しております。本年も、同様の行事の開催を検討します。ご関心のある方々にご予定いただけるよう、下記の通り予告します。
●開催日:2022年11月26日(土)
●場所:慶應義塾大学三田キャンパス(予定)
●開催形式:対面式を含むハイブリッド
※開催時点における感染状況等に鑑み変更する可能性があります
●参加者:参加資格は、大学の学部生で構成されるチーム(ゼミ、研究グループなど)であって、その指導教員が開催日時点で日本年金学会の会員であることです。なお、チーム構成員に教員や大学院生が加わり発表を行うことは不可とします。
●参加費用:無料
●発表方法:チームごとに20~30分の発表(プレゼン)を行っていただきます。また、あらかじめ5千字程度(A4で4~7枚)の発表要旨を作成して、事務局に送付(これは開催当日の配布資料になります)。
●その他:詳細は本年7月頃に改めて発表します。
2. 年金ライフプランセミナー
■2022年度の「年金ライフプランセミナー」ならびに「年金ライフプラン事務局・講師養成セミナー」の参加お申込み受付中です。ライフプランセミナーのページを更新し、セミナー内容をご紹介する動画を公開しております。
https://www.nensoken.or.jp/seminar_forum/lifeplan/
■2022年度年金ライフプランセミナーの残席が少なくなっております。参加ご検討中の方はお申込みをお急ぎください。また、ご好評にお応えして対面式セミナーの追加開催(10月14日)が決定しました。
https://www.nensoken.or.jp/seminar_forum/lifeplan/50s/
■年金シニアプラン総合研究機構が主催するセミナーのほか、企業様や年金基金様が、自社の社員や加入者・受給者のために開催するライフプラン・退職セミナーの開催支援を行っております。
退職後の「健康・生きがい・お金」のことや、年金についての実践的知識を学び、長期家計プランを実際に作成するなどの内容を有するセミナーの開催企画・講師派遣・実施の各段階でサポートいたします。
ご関心がありましたら是非お問い合わせください。
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/plp_nensoken.pdf
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No.39 (2022/04/27)
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特集:第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査
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●サラリーマンの生活と生きがいに関する調査:特集にあたって 高山憲之
●サラリーマンのワークライフバランス ―その影響要因と階層構造― 神原理(査読つき論文)
【要旨】
本稿では、サラリーマンのワークライフバランスに焦点をあて、その影響要因(因果関係)と構造、及び、そこから導き出される課題を明らかにした。因子分析の結果、ワークライフバランスに影響を及ぼす主要因は、「就労環境」や「積極的な生活姿勢」であり、特に「仕事への満足度」が重要な存在であることが明らかになった。クラスター分析からは、「Clu01.低バランス層(30-40代、未婚率が高く、世帯収入と金融資産が少ない)」「Clu02.中バランス層(Clu01.とClu03.の中間値にある層)」「Clu03.高バランス層(50-70代、既婚率が高く、世帯収入と金融資産が多い)」という3層構造の存在が浮き彫りとなった。サラリーマンの間で「ワークライフバランスの階層化」が生じている。
●女性のライフコースの多様化と老後の所得保障 ー「モデル年金」指標の有効性を問うー 丸山桂(査読つき論文)
【要旨】
本研究は、公的年金制度の財政検証の指標として採用されている「モデル年金世帯」が、実際の女性の就業経験や家計状況とどの程度まで乖離が生じているのかを検証するために、第3号被保険者世帯を中心に、家計や老後の生活への備え、および元専業主婦世帯の老後の家計について、分析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。
1)モデル年金世帯に相当する、第3号被保険者で一度も就業経験がないという者の割合は、若年世代になるほど低い傾向にある。そのため、モデル年金の給付水準は財政検証の指標としては意義があっても、個々人に関する老後の生活設計の指標として使用するには限界がある。
2)第3号被保険者の世帯収入や金融資産、老後への備えの状況は、かなり多様化している。第3号被保険者が自身で加入できるようになったiDeCo(個人型DC)への加入率は低く、老後の資産形成手段はもっぱら預金や保険などの従前からある金融商品が活用されていることが、「サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」から分かった。また、第3号被保険者世帯における「老後の備えを何も行っていない」という回答割合は、夫婦がともに第2号被保険者である世帯よりも高かった。
3)高齢期において夫の公的年金収入が家計収入に占める割合は、過去における妻の経歴が専業主婦中心であった世帯の方が、正社員・非正規労働者を含めた共働き世帯よりも高い傾向があった。2019年財政検証で、マクロ経済スライドによる公的年金の給付水準の低下は、年金給付額における基礎年金収入の割合が相対的に高い世帯に、より深刻な影響を与えることが示されており、低所得の専業主婦世帯では、寡婦になった際の生活困窮リスクが一層高まり、女性の貧困問題をさらに深刻化させる可能性がある。
4)現役世代の第3号被保険者について、1)就業経験があるが現在無職である者、2)一度も働いたことがない者、3)現在就業している者、の三者を分ける要因について分析を行った結果、年齢や学歴、世帯収入などを調整すると、現在就業していない第3号被保険者が過去に就業経験があるか否かを分ける決定的な要因は見いだせなかった。他方で、第3号被保険者が現在就業しているか否かについては、未就学の子どもの存在、健康状態、性別役割分業観が関連することが明らかとなった。また、有配偶の女性非正規労働者については、厚生年金加入者の方が第3号被保険者よりもコロナ禍での仕事・職場への満足度が高い傾向になることが分かった。
モデル世帯の所得代替率(給付水準)は、公的年金財政検証の指標として有効であっても、国民にとっては、自身の老後の生活設計には適さないことに留意すべきである。十分な就業期間が残された比較的若い世代にこそ、高齢期の公的年金、自身の就業、資産形成などの多様な手段について適切な情報を提供すべきである。また、高齢期の貧困問題に公的年金制度、社会保障がどう対応すべきかの検討も急がれる。
●現役世代の生きがいとメンタルヘルス -階層、ライフイベント、資産形成に注目して 大風薫(査読つき論文)
【要旨】
すべての年代において生きがいが生き方を見直す重要な視点になっている。このことを踏まえ、本稿では、35歳から64歳の現役世代男女がどの程度、どのような生きがいを持っているのか、生きがいと階層・ライフイベント・資産形成の関わり、そして、生きがいとメンタルヘルスの関係について検討した。得られた結果は以下の通りである。
1)現役世代は65歳以上の高年世代に比べて生きがいを持たない割合が高く、生きがいの対象数も少ない。生きがいの主な対象は、男性では「仕事」、女性では「家族・家庭」「ひとり気まま」である。
2)生きがいの保有や生きがいの対象には階層による格差がある。高学歴や高収入層は「仕事」や「家族」が生きがいの対象だが、階層が低い場合は、「友人」や「SNSによる交流」、「ひとりで気ままに過ごすこと」を生きがいとしている。 3)自発的でない理由による退職経験は生きがいを損なう一方、自己の成長やキャリアアップにつながる自発的な理由による退職経験は生きがいをもたらす。
4)男性は、家族や自己の成長になるライフイベントを経験している場合、生きがいを持ちやすい。他方、女性は、自分の生活を大きく調整せざるを得ないイベントを経験している場合、生きがいを持ちにくくなる。
5)預貯金・保険商品・NISAによる資産形成は生きがいを高めることと関連しており、資産形成行動はメンタルヘルスの良好さと関係している。
本稿では、人生の充実期とみなされ、生きがい研究やライフコース研究において従来あまり注目されてこなかった中年を含む現役世代に注目し、生きがいの規定要因や生きがいとメンタルヘルスとの関係を明らかにしてきた。現在の現役世代の場合、高年世代になっても現在の高年世代ほどの生きがいを得ることは難しいおそれがあるものの、資産形成行動が生きがいやメンタルヘルスの向上につながる可能性はある。生きがいとの関わりの中で資産形成を位置づける適切なコミュニケーションが求められる。
●サラリーマンの生活と生きがい(資産形成と生きがいの関係):第7回『サラリーマンの生活と生きがいに関する調査』の調査結果 菅谷和宏(査読つき論文)
【要旨】
過去30年間において、サラリーマンの生きがい保有率は第2回調査時(1996年)の78.4%から一貫して低下し、2021年の第7回の調査では4割を切り、39.9%(前回比▲3.7%)まで低下した。また、生きがいを「持っていない」とする回答が、第1回調査時の13.1%から26.7%まで増加し、生きがいの喪失者が増大していた。
定年退職後の生活の質(QOL )を維持し、豊かな生活を送るために必要な3つの要素として、「健康の維持・増進」「経済基盤の確保」「生きがいの保有」が必要とされる。ちなみに、第2回調査(1996年)の結果を踏まえて、「将来の生活設計がしっかりできている人ほど将来の生活に不安が少なく、定年退職後に生きがいを持って生活しており、将来の生活設計をしっかり持つことが大切である」と指摘しておいた。2019年に老後資金2000万円問題が提起され、資産形成の機運が高まりつつあるが、平均寿命が延伸し、高齢期の生活期間が長期化する中、定年退職後の生活基盤を確保するためには、若い頃からの生活設計(ライフプラン)と、将来に向けた資産形成の準備が必要である。
本稿では、第7回調査時における第2号被保険者(3929人)について、資産形成と生きがいとの関係について分析している。 人生100年時代の到来を迎える中、高齢期の生活期間は長期化し、必要な生活費も増加している。若い年齢からの高齢期に向けた資産形成の重要性が増している。しっかりした経済基盤を構築することが、生きがいのある生活に繋がるだろう。
●サラリーマンとその妻にとっての生きがいと生活満足度 福山圭一(査読つき論文)
【要旨】
第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査のデータに基づき、生きがい保有が生活満足度とどのように関連しているかといったことなどを探るための分析を行った。生きがいの対象ごとに生きがい保有率を見ると、「社会活動(ボランティアを含む)」を挙げた者の生きがい保有率が高く、「ひとり気ままにすごすこと」を挙げた者の保有率が低かった。そこで、全般的な生活満足度及び各生活満足度について、本調査のテーマである生きがい保有のほかに、社会参加の程度、生きがいの対象に「ひとりで気ままにすごすこと」を挙げたかどうかを加え、また、年齢、年収、資産額など本調査で把握可能な回答者の属性を説明変数とする重回帰分析を行った。この結果、生きがい保有の極めて大きい影響力が観測された。充実した生活が満足度の高い生活であるとすると、そのために生きがいが大切であることを明確に示すものと言える。また、社会参加の重要性も確認された。年収や資産額は満足度を上昇させる。生きがいの対象に「ひとりで気ままにすごすこと」を挙げた者の満足度は低下する。年齢が高いほど満足度が高い。サラリーウーマンは男性サラリーマンに比べて満足度が高い。子どもがある世帯の妻は満足度が低い。持ち家があると満足度が高い。定年を経験したか50歳以上で退職を経験した者や完全退職した者は現役に比べ満足度が高い。生きがい保有と各満足度との間では、熱中できる趣味、精神的ゆとり、社会の役に立つこと、家族の理解・愛情、仕事のはりあいといった項目で特に生きがいの保有率が上昇し、逆に、時間的ゆとりでは生きがい保有率が減少する。生きがいを持つことと生活満足度との間に強い関連性があることが明らかになった今回の分析結果は、生きがいを持つことが充実した生活を送るために大切であるとする年金ライフプランセミナーに対し、1つのエビデンスを提供するものと言えるだろう。
●サラリーマンの生活と生きがいの変化(時系列分析):第1~7回『サラリーマンの生活と生きがいに関する調査』の調査結果 菅谷和宏(査読つき論文)
【要旨】
本稿では、1991年の第1回調査から2021年の第7回調査までの30年間にサラリーマンの生活と生きがいがどのように変化してきたかを、人口動態・経済環境・雇用環境の変化とともに分析した。生きがいの保有率は、第2回調査(1996年)の78.4%から一貫して低下してきており、今回の調査では、ついに4割を切り、39.9%(前回比▲3.7%)まで低下した。また、生きがいを「持っていない」とする回答が、第1回調査の13.1%から26.7%まで増加し、生きがいの喪失が伺われた。「生きがいを得られる場」に関する回答は、前回までは「家庭」が凡そ60%台で推移、「仕事・会社」は一貫して減少傾向にあったが、今回は「家庭」が50%台に減少、「仕事・会社」は初めて増加に転じた。
「仕事・就業」の満足度も今までは減少傾向にあったが、今回は、ほぼ全ての項目で増加に転じていた。これは、65歳までの高齢者の「雇用確保措置」(2006年4月及び2013年4月施行)や70歳までの「就業機会の確保措置」(2021年4月施行)により、高齢者の雇用が増加し、定年延長や高齢者の雇用改善により、高齢者の賃金と地位などの処遇が改善していることが要因と考えられる。今まで、生きがいの要素として「仕事」は一貫してその役割が縮小してきたが、平均寿命の延伸と労働力人口の減少などの人口・社会・雇用環境の変化により、再び、「生きがいの要素」や「生きがいの場」として「仕事」の割合が高まっていくことが予測される。今後の動向への注視が必要である。
一方、生きがいの対象は「他人との関係」から「個人」へと変化しており、社会や他人とのつながりを求めず、「ひとりの時間」に生活の満足を見いだそうとしている状況が伺われる。
生きがいの意味や内容は加齢とともに変化し、また、男女でも生きがいの意味・内容は異なる。「社会との関係性」を保ち、「周囲から必要とされ」、「自らの達成感を得られる」ことが、生きがいの保有につながる。生きがいを持ち続けられる社会の枠組みが必要であり、それが今後における日本の超高齢化社会への対応とその活性化にもつながるだろう。
●サラリーマンの生活と生きがいの変化(団塊の世代を追って):第1~7回『サラリーマンの生活と生きがいに関する調査』の調査結果 菅谷和宏(査読つき論文)
【要旨】
1991年の第1回調査から2021年の第7回調査までの30年間におけるサラリーマンの生活と生きがいの変化について調べた結果、生きがいの保有率は、第2回調査時(1996年)の78.4%から一貫して低下しており、第7回の調査では、ついに4割を切り、39.9%(前回比▲3.7%)まで低下した。また、生きがいを「持っていない」とする回答が、第1回調査時の13.1%から26.7%まで増加し、生きがいの喪失者が増大していた。
このような中、生きがいの保有率は「団塊の世代」に関するかぎり、第1回調査時から前回の第6回調査時まで59.0%と、同程度の水準を維持していた。本格的に就業から引退した後も、他の世代と異なって生きがいを持ち続け、「経済的ゆとり」を持ち、仕事に代わる「趣味」などに生きがいを見いだしている団塊の世代がいた。前回調査から5年が経過し、団塊の世代は後期高齢者と呼ばれる一歩手前の72~74歳となった。団塊の世代は今回の調査でも変わらず、高めの生きがいを保有し続けていたのだろうか。本稿では第1回調査時(40~44歳)から第7回調査時(70~74歳)まで、団塊の世代のコーホート(cohort)を抽出し、生活と生きがいの変化を調べた。
その結果、驚くことに、団塊の世代において「生きがいの喪失」が見いだされた。これは、高齢化に伴い、自らの健康や家族などの「生きがい」の目標が失われたためだったと推測される。ただし、今回調査の結果については、2020年に発生した新型コロナウイルスの影響下で、趣味や友人との交流が失われたなどの特殊要因があったことも考慮する必要がある。
人によって生きがいは様々であるが、生きがいの対象を何に求めるのかが重要となる。健康や家族のようにいずれ失われるものだけではなく、時が経過しても、なくならないものに生きがいを見いだすことができれば、生きがいを持ち続けることができる。その答えの一つが「社会・地域」ではないだろうか。加齢とともに生きがいの対象を変えていくことも求められよう。
●第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査:調査の目的と方法 平河茉璃絵
【要旨】
本調査は定年移行期前後におけるサラリーマンの生活と生きがいの関連を分析し、これらの人々に対する退職後の生活に向けた支援策や、生きがいを持った生活ができる政策の提言に結びつけることを目的としている。
本調査は平成3年(1991年)から5年ごとに実施してきた。今回は第7回目の調査である。継続的に調査を実施することによって、社会情勢や経済環境が変わり、世代の移り変わる中で、サラリーマンの生活と生きがいに関する考え方がどのように変化してきたかを、明らかにする。今回調査では過去6回の調査との継続性を維持しつつ、新型コロナウイルス流行による職場環境の変化や、近年のインターネット利用者の増加によるネットワークコミュニティの発達と生きがいとの関連を明らかにするために、調査項目を追加した。その他、消費行動、キャリア形成、老後の資産形成行動の違い等と生きがい保有との関連について、分析できる項目を追加した。
調査は次の方法で行われた。(1)調査対象地域は全国、(2)調査形態はインターネット調査、(3)調査対象者は35~74歳の厚生年金被保険者、厚生年金受給者、共済年金受給者及びそれらの配偶者であり、合計4998人、(4)実施時期は2021年8月19日から8月24日。
●第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査:調査結果の概要及び男女別・年齢階層別比較 平河茉璃絵、山本進
【要旨】
本稿では、35~74歳の第2号被保険者の男女と第3号被保険者の女性を対象にして実施した「第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の結果を、男女別及び年齢階層別に比較した。得られた主たる知見は、次のとおりである。 第1に生きがいとは「生きる喜びや満足感」「心の安らぎや気晴らし」「生活の活力やはりあい」であると考える人が多い。そのような生きがいを持つ人の割合は、65歳以上の男女では5割以上であるが、64歳以下の男女では3割から4割強にとどまる。生きがいに感じることは、男性では「趣味」、女性では「子ども・孫・親などの家族・家庭」が多い。生きがいを感じる場としては、全体として「家庭」という回答が多く、64歳以下の第2号被保険者男女では「仕事・社会」という回答も多い。その一方、「どこにもない」という回答も2割前後ある。
第2に、これから先の楽しみがないという回答者の割合は35~44歳で30%台半ばであるが、年齢が高いほど低下する。代わりに、時期は不明だが楽しみがあるという回答割合が年齢とともに上昇する。また、1年以内に楽しみがある人の割合は概ね2割前後であるが、35~44歳の若い年齢階層と55~64歳の第2号被保険者では、その割合がやや多い。55~64歳の第2号被保険者は定年退職等を控え、その後の生活を楽しみに感じている可能性がある。
第3に、生活の満足度については、「健康」「時間的ゆとり」「経済的ゆとり」「精神的ゆとり」「家族の理解・愛情」「熱中できる趣味」ほか2項目では総じて満足度が高い一方、「仕事のはりあい」ほか5項目では「どちらともいえない」が多い。満足度の高い項目では、年齢が高いほど満足度は高まる傾向にある。
自由時間については、45歳以上の男女では「テレビ・ビデオ・ラジオ・新聞」、35~44歳の男性では「ひとりで趣味・スポーツ・学習など」、35~44歳の女性では「インターネット・SNS」に使うという回答が多い。なお、35~44歳の第2号被保険者の女性は、その34.3%が「自由時間が不十分である」と感じている。
経済的ゆとりに関連して、まず、現在の暮らし向きについては4~5割が「普通」と回答しているものの、「少し苦しい」「とても苦しい」が「少し楽だ」「とても楽だ」を上回り、年齢が若いほど、その傾向が顕著である。5年前と比べると、「変わらない」が5~6割、「暮らし向きが悪化している」のは2~3割、残り1~2割は暮らし向きが改善している。また、自由に使えるお金については、概して「旅行・レジャー」「外食」「衣服・服飾品」に使うことが多い。年齢が高まるほど「旅行・レジャー」「友人・知人・恋人との交流」「家族との交流」に多くのお金を費やす傾向がある。
働く目的については、大多数が「収入を得ること」と回答している。次いで「人との関わりや社会との接点をもつこと」という回答も多い。なお、仕事のはりあいへの満足度とは異なり、仕事の満足度に関しては総じて「やや満足している」という回答が多く見られた。ただし、54歳以下の第2号被保険者の男性の場合、「どちらともいえない」という回答が最多であった。
家族の理解・愛情に関連して、まず、配偶者・パートナーとの関係は概ね良好となっている。ただし、54歳以下の第2号被保険者の女性は家事負担への不満が比較的強い。男女とも女性の家事分担割合が大きいと考えているものの、具体的な分担割合の認識にはギャップが存在し、自身の分担割合を大きく評価している可能性がある。また、18歳以上の非同居の子どもについて、そのような子どものいる者の過半数は年1、2回以上の交流があり、6~7割前後は回答者の自宅から「ふだんの交通手段で1時間以上」の場所に子どもが居住しているが、回答者の年齢が高いほど居住場所が近づく傾向が見られた。
仕事の満足度と配偶者・パートナーとの関係については、新型コロナウイルス流行による影響も調べたが、双方とも「変わらない」という回答が大多数であった。ただし、配偶者・パートナーとの関係については、相手のポジティブな面を従来より強く意識する人がいた一方、家事負担への不満をより一層強く意識するようになった人もいる。また、仕事の満足度については、賃金の満足度が低下したものの、休暇の取りやすさや家庭と仕事の両立の満足度が上昇したという回答がやや多く見られた。
第4に、退職後の生活については、第2号被保険者の男女とも本人の意向として4割前後が現職退職後も可能であれば仕事を継続したいと考えている。しかしながら配偶者・パートナーに対しては、男性の概ね5割前後、女性の6~7割前後が現職退職後に就労を望んでいる。55~64歳の4割前後は、生活設計について配偶者・パートナーとまったく話し合っていない。
(4) 「第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の成果を公表しました(2021/03/31)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220331pressrelease.pdf
●論文(当機構ウェブジャーナル『年金研究』第 19 号に掲載):
https://www.nensoken.or.jp/publication/nenkinkenkyu
●本件の概要についてのスライド資料:
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220331gaiyou.pdf
(5) 当機構理事長 高山憲之へのインタビュー記事が読売新聞に掲載されました(2022/03/30)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/20220331095947.pdf
2022年4月から年金制度の一部が変更となります。そのことを踏まえて行われた当機構理事長(高山憲之)に対するインタビューの記事が同年3月30日付けの読売新聞朝刊(23面の社会保障欄)に掲載されました。
(6) 年金調査研究レポート「最近のウクライナ情勢とESG投資について-ロシアのウクライナ侵攻後の論説のサーベイと長期投資の観点からの考察-」(杉田健)を公開しました(2022/04/14)
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/rr_r04_01.pdf
【要旨】
2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻に伴い、ESG投資について様々な論稿が公表されているが、本稿はそれらをサーベイするとともに、長期投資である年金資産運用の観点から論評するものである。ESG投資には様々な種類があるが、論稿が主に念頭に置いているのはネガティブ・スクリーニングである。論稿はESG投資の是非に関するもの、ESG投資の運営に関するもの、ESG投資の効果に関するもの、に分類できる。ESG投資の是非については、ESG投資は破綻したというものもあればESG投資の意義が増したというものもある。また、ESG投資の運営に関しては、化石燃料関連産業・原子力産業・防衛産業・カントリー・リスクについての議論がある。ESG投資の効果に関しては、ESG投資の観点から早めにロシア関連を外しておいてよかったという成功体験もあれば、天然ガスは環境負荷が軽いのでロシアのエネルギー産業に多く投資していて、今回責任投資の観点から撤退したというものもある。
これらの論稿について、以下のように評価および考察する:
・ロシアのウクライナ侵攻で批判の矢面にさらされているのはESG投資の手法のうちネガティブ・スクリーニングであって、ESG全般ではない。
・ESG投資のパフォーマンス評価は何を基準とするかで変わってくるが、既存の指標への追随を目標とする場合に、指標内容の変更による後追いのリスクには留意すべきである。
・ESG投資を長期で考えれば、ロシアのウクライナ侵攻による影響は一過性のものである可能性がある。
・カントリー・リスクについては、独裁色の強い国を株式投資および債券投資の対象から外しておく方がリスクは少ない。
キーワード:ESG、ウクライナ、化石燃料、原子力、防衛産業、カントリー・リスク、後追い
(7) 第7回ユース年金学会の開催予告(2022/03/16)
https://pension-academy.jp/youth/pdf/07/2022_youthyokoku.pdf
大学学部生のゼミや研究グループが一堂に会し、年金に関する発表を行っていただく機会として、2016年11月からユース年金学会を開催しております。本年も、同様の行事の開催を検討します。ご関心のある方々にご予定いただけるよう、下記の通り予告します。
●開催日:2022年11月26日(土)
●場所:慶應義塾大学三田キャンパス(予定)
●開催形式:対面式を含むハイブリッド
※開催時点における感染状況等に鑑み変更する可能性があります
●参加者:参加資格は、大学の学部生で構成されるチーム(ゼミ、研究グループなど)であって、その指導教員が開催日時点で日本年金学会の会員であることです。なお、チーム構成員に教員や大学院生が加わり発表を行うことは不可とします。
●参加費用:無料
●発表方法:チームごとに20~30分の発表(プレゼン)を行っていただきます。また、あらかじめ5千字程度(A4で4~7枚)の発表要旨を作成して、事務局に送付(これは開催当日の配布資料になります)。
●その他:詳細は本年7月頃に改めて発表します。
2. 年金ライフプランセミナー
■2022年度の「年金ライフプランセミナー」ならびに「年金ライフプラン事務局・講師養成セミナー」の参加お申込み受付中です。ライフプランセミナーのページを更新し、セミナー内容をご紹介する動画を公開しております。
https://www.nensoken.or.jp/seminar_forum/lifeplan/
■2022年度年金ライフプランセミナーの残席が少なくなっております。参加ご検討中の方はお申込みをお急ぎください。また、ご好評にお応えして対面式セミナーの追加開催(10月14日)が決定しました。
https://www.nensoken.or.jp/seminar_forum/lifeplan/50s/
■年金シニアプラン総合研究機構が主催するセミナーのほか、企業様や年金基金様が、自社の社員や加入者・受給者のために開催するライフプラン・退職セミナーの開催支援を行っております。
退職後の「健康・生きがい・お金」のことや、年金についての実践的知識を学び、長期家計プランを実際に作成するなどの内容を有するセミナーの開催企画・講師派遣・実施の各段階でサポートいたします。
ご関心がありましたら是非お問い合わせください。
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