明日への支え、認知症の方々のための障害手帳取得について
2023/06/23 (Fri) 07:50
明日への支え、認知症の方々のための障害手帳取得について
認知症の方は手帳取得できるのだろうか。こんな疑問を感じたことがある方は少なくないはず。
本日は認知症と障害手帳取得に関してお話します。
身体障碍者手帳と精神障害手帳
まずは身体障碍者手帳と精神障害者保健福祉手帳の交付要件等に関しておさらいしてみましょう。
身体障碍者手帳
1.概要
身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付する。
根拠:身体障害者福祉法第15条
2.交付対象者
身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害があるもの
別表に定める障害の種類(いずれも、一定以上で永続することが要件とされている)
・視覚障害
・聴覚又は平衡機能の障害
・音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
・肢体不自由
・心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
・ぼうこう又は直腸の機能の障害
・小腸の機能の障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
・肝臓の機能の障害
3.障害の程度
法別表に該当するかどうかの詳細については、身体障害者福祉法施行規則別表第5号「身体障害者障害程度等級表」において、障害の種類別に重度の側から1級から6級の等級が定められている。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。
何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含みます)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。 対象となるのは全ての精神障害で、次のようなものが含まれます。
統合失調症
うつ病、そううつ病などの気分障害
てんかん
薬物依存症
高次脳機能障害
発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
ただし、知的障害があり、上記の精神障害がない方については、療育手帳制度があるため、手帳の対象とはなりません。(発達障害と知的障害を両方有する場合は、両方の手帳を受けることができます。)
また、手帳を受けるためには、その精神障害による初診日から6か月以上経過していることが必要になります。
精神障害者保健福祉手帳の等級について
等級は1~3級まであります。
1級>精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級>精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級>精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
認知症の方々は手帳取得は可能か
結論から申し上げますと、身体障碍者手帳は状況次第で取得可能、精神障害者保健福祉手帳は取得可能です。
まず、身体障碍者手帳に関してですが、脳血管性認知症などで手帳交付を受けられる程度の肢体不自由等があれば取得が可能となります。
次に精神障碍者保健福祉手帳に関しては、ほとんどの方が対象となると考えられます。
認知症の方を診察する際、一人で生活した時に適切な食事・身辺の清潔保持・金銭管理や計画的な買い物・規則的な通院や服薬・適切な意思伝達や協調的な人間関係・安全保持や危機対応・社会的な手続きや公共施設の利用・社会情勢や趣味や娯楽への関心・文化社会活動への参加等々ができるかどうかを評価します。
認知症は認知機能の低下のために生活や職業に支障が出た場合に診断されます。
先ほど精神障害者保健福祉手帳の等級の中でも一番軽い3級をみてみると、
3級>精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものとされています。
当然認知症の方は何らかの生活の支障があるため、対象となる方はかなり多くなりそうです。
補足:では認知症は精神科訪問看護で介入ができるのか
こうなってくると気になるのは、認知症患者に対して訪問看護さんは精神科訪問看護で介入ができるのかというところ。
病名が認知症の場合は基本的には介護保険の訪問看護が優先となりそうです。ただし、医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定する認知症の方の場合は精神訪問看護指示書による精神科訪問看護を行うことができるとされています。
※精神科在宅患者支援管理料の算定要件
精神科在宅患者支援管理料には3つの算定要件があります。
1.在宅で療養を行っている通院が困難な患者に対して、保険医療機関の精神科医師等が、患者または家族等の同意を得て、計画的な医学管理の下に、訪問診療または訪問看護を行っている場合に、単一建物診療患者の人数に従い、初回算定日の属する月を含めて6カ月を限度として、月1回に限り算定することができます。
2.在宅で療養を行っている通院が困難な患者に対して、保険医療機関の精神科の医師等が別の訪問看護ステーションの保健師、看護師、准看護師または作業療法士と連携し、 患者または家族等の同意を得て、計画的な医学管理の下に、定期的な訪問診療を行っている場合に、単一建物診療患者の人数に従い、初回算定日の属する月を含めて6カ月を限度として、月1回に限り算定することができます。
3.1または2を算定した患者の中で引き続き訪問診療が必要と判断された患者に対して、保険医療機関の精神科医師等が 、患者またはその家族等の同意を得て、計画的な医学管理の下に、月1回以上の定期的な訪問診療を行っている場合に、単一建物診療患者の人数に従い、精神科在宅患者支援管理料1または2の初回算定日の属する月を含めて2年を限度とし て、月1回に限り算定することができます。ただし、1または2を算定した月には、3を算定することはできません。
まとめ
今回は認知症と障害手帳取得に関してお話をしました。
精神障害者保健福祉手帳や身体障害手帳を取得できれば患者様にもメリットとなる部分が出てくるかもしれません。
ちくさ病院在宅医療ホームページ
https://w.bme.jp/38/3135/4800/XXXX
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担当エリア:熱田区・港区・中村区・名東区・北区
渡邉相談員 TEL:080-3595-8467
担当エリア:千種区・守山区・瑞穂区・南区・天白区・中区
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看護師長 五藤 TEL :080-2654-2057
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編集/発行:医療法人豊隆会 ちくさ病院 在宅医療推進部
〒464-0851 名古屋市千種区今池南4-1
認知症の方は手帳取得できるのだろうか。こんな疑問を感じたことがある方は少なくないはず。
本日は認知症と障害手帳取得に関してお話します。
身体障碍者手帳と精神障害手帳
まずは身体障碍者手帳と精神障害者保健福祉手帳の交付要件等に関しておさらいしてみましょう。
身体障碍者手帳
1.概要
身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付する。
根拠:身体障害者福祉法第15条
2.交付対象者
身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害があるもの
別表に定める障害の種類(いずれも、一定以上で永続することが要件とされている)
・視覚障害
・聴覚又は平衡機能の障害
・音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
・肢体不自由
・心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
・ぼうこう又は直腸の機能の障害
・小腸の機能の障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
・肝臓の機能の障害
3.障害の程度
法別表に該当するかどうかの詳細については、身体障害者福祉法施行規則別表第5号「身体障害者障害程度等級表」において、障害の種類別に重度の側から1級から6級の等級が定められている。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。
何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含みます)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。 対象となるのは全ての精神障害で、次のようなものが含まれます。
統合失調症
うつ病、そううつ病などの気分障害
てんかん
薬物依存症
高次脳機能障害
発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
ただし、知的障害があり、上記の精神障害がない方については、療育手帳制度があるため、手帳の対象とはなりません。(発達障害と知的障害を両方有する場合は、両方の手帳を受けることができます。)
また、手帳を受けるためには、その精神障害による初診日から6か月以上経過していることが必要になります。
精神障害者保健福祉手帳の等級について
等級は1~3級まであります。
1級>精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級>精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級>精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
認知症の方々は手帳取得は可能か
結論から申し上げますと、身体障碍者手帳は状況次第で取得可能、精神障害者保健福祉手帳は取得可能です。
まず、身体障碍者手帳に関してですが、脳血管性認知症などで手帳交付を受けられる程度の肢体不自由等があれば取得が可能となります。
次に精神障碍者保健福祉手帳に関しては、ほとんどの方が対象となると考えられます。
認知症の方を診察する際、一人で生活した時に適切な食事・身辺の清潔保持・金銭管理や計画的な買い物・規則的な通院や服薬・適切な意思伝達や協調的な人間関係・安全保持や危機対応・社会的な手続きや公共施設の利用・社会情勢や趣味や娯楽への関心・文化社会活動への参加等々ができるかどうかを評価します。
認知症は認知機能の低下のために生活や職業に支障が出た場合に診断されます。
先ほど精神障害者保健福祉手帳の等級の中でも一番軽い3級をみてみると、
3級>精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものとされています。
当然認知症の方は何らかの生活の支障があるため、対象となる方はかなり多くなりそうです。
補足:では認知症は精神科訪問看護で介入ができるのか
こうなってくると気になるのは、認知症患者に対して訪問看護さんは精神科訪問看護で介入ができるのかというところ。
病名が認知症の場合は基本的には介護保険の訪問看護が優先となりそうです。ただし、医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定する認知症の方の場合は精神訪問看護指示書による精神科訪問看護を行うことができるとされています。
※精神科在宅患者支援管理料の算定要件
精神科在宅患者支援管理料には3つの算定要件があります。
1.在宅で療養を行っている通院が困難な患者に対して、保険医療機関の精神科医師等が、患者または家族等の同意を得て、計画的な医学管理の下に、訪問診療または訪問看護を行っている場合に、単一建物診療患者の人数に従い、初回算定日の属する月を含めて6カ月を限度として、月1回に限り算定することができます。
2.在宅で療養を行っている通院が困難な患者に対して、保険医療機関の精神科の医師等が別の訪問看護ステーションの保健師、看護師、准看護師または作業療法士と連携し、 患者または家族等の同意を得て、計画的な医学管理の下に、定期的な訪問診療を行っている場合に、単一建物診療患者の人数に従い、初回算定日の属する月を含めて6カ月を限度として、月1回に限り算定することができます。
3.1または2を算定した患者の中で引き続き訪問診療が必要と判断された患者に対して、保険医療機関の精神科医師等が 、患者またはその家族等の同意を得て、計画的な医学管理の下に、月1回以上の定期的な訪問診療を行っている場合に、単一建物診療患者の人数に従い、精神科在宅患者支援管理料1または2の初回算定日の属する月を含めて2年を限度とし て、月1回に限り算定することができます。ただし、1または2を算定した月には、3を算定することはできません。
まとめ
今回は認知症と障害手帳取得に関してお話をしました。
精神障害者保健福祉手帳や身体障害手帳を取得できれば患者様にもメリットとなる部分が出てくるかもしれません。
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編集/発行:医療法人豊隆会 ちくさ病院 在宅医療推進部
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