個人宅 訪問診療導入事例「維持透析を継続しながら、肝性脳症と褥瘡に対する訪問診療を併用し、在宅療養と家族支援を行った事例」
2026/10/01 (Thu) 07:50
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ちくさ病院 メールマガジン
vol.1774
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
慢性腎不全で維持透析中の86歳男性に対し、慢性肝疾患に伴う肝性脳症による意識変容の反復と仙骨部褥瘡を契機として訪問診療を導入した事例である。透析クリニックへの通院は継続できていたものの、肝性脳症、褥瘡、全身状態の変化など透析以外の医療課題が増加し、就労する長男の介護負担も大きくなっていた。在宅医療では、透析管理は専門医療機関で継続し、訪問診療が肝性脳症の管理、採血、内服調整、褥瘡管理を担う役割分担を行った。ケアマネジャーにとっては、定期的に医療機関へ通院している患者であっても、疾患全体が管理されているとは限らず、生活の場で生じている医療課題と家族負担を把握して併診体制を構築することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:86歳・男性居住地:名古屋市港区世帯構成:親子キーパーソン:長女(別居・名古屋市内在住)
保険・福祉情報
医療保険:生活保護介護保険:申請中
診断名
・慢性肝疾患に伴う肝性脳症・慢性腎不全(維持透析中)・糖尿病・糖尿病性腎症・仙骨部褥瘡
導入の背景
慢性腎不全に対して維持透析を継続していた。透析導入後も自立した生活を送っていたが、高齢化に伴って徐々に体力が低下し、透析日以外は自宅で過ごす時間が増えていた。
さらに、慢性肝疾患の進行に伴って高アンモニア血症を繰り返し、会話が成立しにくくなる、傾眠や昼夜逆転、興奮がみられるなど、肝性脳症による意識状態の変化が生じるようになった。入院治療によって一時的に改善しても、退院後に再び状態が悪化し、入退院を繰り返していた。
同居する長男は就労しており、日中は本人が一人で過ごす時間が長かった。帰宅時に意識状態が変化していることもあり、救急搬送が必要な状態かどうかを家族だけで判断することが大きな負担となっていた。
食事摂取量や活動量も低下し、臥床時間が増加したことで仙骨部に褥瘡を認めた。訪問看護による継続的な創部管理も必要となった。
透析クリニックでは維持透析を継続していたものの、肝性脳症の管理、褥瘡処置、日常的な全身状態の評価、家族の急変判断への支援までを一体的に行うことは難しかった。
本人には透析を続けながら自宅で生活したいという意向があったため、透析医療は専門医療機関で継続し、それ以外の日常的な医学管理を訪問診療が担う併診体制を構築することとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、肝性脳症の再燃を早期に把握するため、意識状態、会話の変化、傾眠、食欲などを継続的に確認した。必要に応じて採血を行い、全身状態を評価しながら内服調整を実施した。
家族には、食欲低下、眠気の増加、会話の変化など、これまでの経過から注意すべき状態変化について説明し、異変を感じた場合には早めに相談するよう共有した。
仙骨部褥瘡については訪問看護と連携して創傷処置を継続した。臥床時間が長いことから、体位変換や除圧の必要性を確認し、エアマットなどの福祉用具についても検討した。
維持透析については従来の透析クリニックで継続し、訪問診療では透析以外の全身状態や生活上の医療課題を把握する役割を担った。
また、長男が就労を続けながら介護している状況を踏まえ、すべての状態変化を家族だけで判断しなくてもよいよう相談経路を明確にした。定期的に医療者が介入することで、家族が病状変化について相談できる体制につながった。
医療対応の詳細
主病
慢性肝疾患に伴う肝性脳症、慢性腎不全(維持透析中)
対応内容
・意識状態、傾眠、会話の変化など肝性脳症の兆候の確認・食事摂取量および全身状態の評価・採血による病状確認・肝性脳症に対する内服調整・透析クリニックとの併診および情報共有・訪問看護と連携した仙骨部褥瘡の管理・体位変換、除圧方法、福祉用具の検討・家族への状態悪化時の観察ポイントと相談方法の説明・就労する長男の介護負担を踏まえた支援体制の調整・ケアマネジャーを含む多職種との情報共有
医療処置
・褥瘡処置・採血・血液透析(透析クリニックで継続)
支援のポイント
・透析通院が継続できていても、透析以外の疾患や生活上の医療課題が十分に管理されているかを確認する・複数の疾患を有する患者では、専門医療機関と訪問診療の役割を明確にして併診体制を構築する・肝性脳症では本人の自覚だけに頼らず、会話、傾眠、食欲など普段との違いを家族や訪問看護と共有する・救急搬送の判断を家族だけに委ねず、状態変化時に医療者へ早期相談できる経路を整える・臥床時間が増えた場合は褥瘡リスクを早期に評価し、処置だけでなく体位変換や除圧環境も整える・同居家族がいても就労している場合は、日中の見守り状況や実際に担える介護量を確認する・本人の「透析を続けながら自宅で生活したい」という意向を踏まえ、家族が介護を継続できる体制も同時に整える
考察
本症例は、維持透析によって専門医療機関との接点は保たれていたものの、肝性脳症、褥瘡、全身状態の低下など、透析以外の課題が在宅生活の継続を困難にしていた事例である。
定期的に通院している患者では、「すでに医療につながっている」と判断されやすい。しかし、専門外来では特定の疾患管理が中心となるため、生活の場で生じる複数の問題をすべて把握することが難しい場合がある。本症例では、透析は専門医療機関が担い、訪問診療が肝性脳症や褥瘡を含めた日常的な全身管理を担うことで、それぞれの機能を補完した。
また、肝性脳症では意識状態が変動するため、家族にとって急変かどうかの判断が難しく、繰り返される救急搬送への不安が介護負担につながっていた。具体的な前兆を共有し、早期に相談できる医療体制を整えることは、本人の病状管理だけでなく家族の心理的負担を軽減するうえでも重要である。
ケアマネジャーにとっては、専門医療への通院が継続できているかだけでなく、「それ以外の時間を自宅でどのように過ごしているか」という視点で生活を評価する必要がある。既存の専門医療を維持しながら、足りない部分を訪問診療や訪問看護で補うという併診の考え方が、複数の医療課題を抱える患者の在宅生活を支える一つの方法となる。
付記情報
・診療科:内科、腎臓内科・病態・症状:その他・世帯構成:親子
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Copyright © 2019 Chikusa Hospital All Rights Reserved.
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基本情報
年齢・性別:86歳・男性居住地:名古屋市港区世帯構成:親子キーパーソン:長女(別居・名古屋市内在住)
保険・福祉情報
医療保険:生活保護介護保険:申請中
診断名
・慢性肝疾患に伴う肝性脳症・慢性腎不全(維持透析中)・糖尿病・糖尿病性腎症・仙骨部褥瘡
導入の背景
慢性腎不全に対して維持透析を継続していた。透析導入後も自立した生活を送っていたが、高齢化に伴って徐々に体力が低下し、透析日以外は自宅で過ごす時間が増えていた。
さらに、慢性肝疾患の進行に伴って高アンモニア血症を繰り返し、会話が成立しにくくなる、傾眠や昼夜逆転、興奮がみられるなど、肝性脳症による意識状態の変化が生じるようになった。入院治療によって一時的に改善しても、退院後に再び状態が悪化し、入退院を繰り返していた。
同居する長男は就労しており、日中は本人が一人で過ごす時間が長かった。帰宅時に意識状態が変化していることもあり、救急搬送が必要な状態かどうかを家族だけで判断することが大きな負担となっていた。
食事摂取量や活動量も低下し、臥床時間が増加したことで仙骨部に褥瘡を認めた。訪問看護による継続的な創部管理も必要となった。
透析クリニックでは維持透析を継続していたものの、肝性脳症の管理、褥瘡処置、日常的な全身状態の評価、家族の急変判断への支援までを一体的に行うことは難しかった。
本人には透析を続けながら自宅で生活したいという意向があったため、透析医療は専門医療機関で継続し、それ以外の日常的な医学管理を訪問診療が担う併診体制を構築することとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、肝性脳症の再燃を早期に把握するため、意識状態、会話の変化、傾眠、食欲などを継続的に確認した。必要に応じて採血を行い、全身状態を評価しながら内服調整を実施した。
家族には、食欲低下、眠気の増加、会話の変化など、これまでの経過から注意すべき状態変化について説明し、異変を感じた場合には早めに相談するよう共有した。
仙骨部褥瘡については訪問看護と連携して創傷処置を継続した。臥床時間が長いことから、体位変換や除圧の必要性を確認し、エアマットなどの福祉用具についても検討した。
維持透析については従来の透析クリニックで継続し、訪問診療では透析以外の全身状態や生活上の医療課題を把握する役割を担った。
また、長男が就労を続けながら介護している状況を踏まえ、すべての状態変化を家族だけで判断しなくてもよいよう相談経路を明確にした。定期的に医療者が介入することで、家族が病状変化について相談できる体制につながった。
医療対応の詳細
主病
慢性肝疾患に伴う肝性脳症、慢性腎不全(維持透析中)
対応内容
・意識状態、傾眠、会話の変化など肝性脳症の兆候の確認・食事摂取量および全身状態の評価・採血による病状確認・肝性脳症に対する内服調整・透析クリニックとの併診および情報共有・訪問看護と連携した仙骨部褥瘡の管理・体位変換、除圧方法、福祉用具の検討・家族への状態悪化時の観察ポイントと相談方法の説明・就労する長男の介護負担を踏まえた支援体制の調整・ケアマネジャーを含む多職種との情報共有
医療処置
・褥瘡処置・採血・血液透析(透析クリニックで継続)
支援のポイント
・透析通院が継続できていても、透析以外の疾患や生活上の医療課題が十分に管理されているかを確認する・複数の疾患を有する患者では、専門医療機関と訪問診療の役割を明確にして併診体制を構築する・肝性脳症では本人の自覚だけに頼らず、会話、傾眠、食欲など普段との違いを家族や訪問看護と共有する・救急搬送の判断を家族だけに委ねず、状態変化時に医療者へ早期相談できる経路を整える・臥床時間が増えた場合は褥瘡リスクを早期に評価し、処置だけでなく体位変換や除圧環境も整える・同居家族がいても就労している場合は、日中の見守り状況や実際に担える介護量を確認する・本人の「透析を続けながら自宅で生活したい」という意向を踏まえ、家族が介護を継続できる体制も同時に整える
考察
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また、肝性脳症では意識状態が変動するため、家族にとって急変かどうかの判断が難しく、繰り返される救急搬送への不安が介護負担につながっていた。具体的な前兆を共有し、早期に相談できる医療体制を整えることは、本人の病状管理だけでなく家族の心理的負担を軽減するうえでも重要である。
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