個人宅 訪問診療導入事例「心不全とCOPDを有する独居高齢者に対し、多職種で増悪の早期発見と在宅生活継続を支えた事例」
2026/09/29 (Tue) 07:50
紹介動画.png ( https://w.bme.jp/38/3135/17957/XXXX )
ちくさ病院 メールマガジン
vol.1772
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
慢性心不全とCOPDにより入退院を繰り返していた82歳独居男性に対し、通院困難と再入院予防を目的として訪問診療を導入した事例である。退院後は訪問看護、訪問介護、福祉用具を組み合わせ、体重、浮腫、呼吸状態、服薬状況などを継続的に確認する体制を構築した。体重増加と下肢浮腫、呼吸困難の増悪を訪問看護が早期に把握し、臨時往診と薬剤調整につなげた。また、本人の「できる限り自宅で暮らしたい」という希望と、別居する長女の安全面への不安を共有し、必要時には入院も選択肢とする方針を確認した。ケアマネジャーにとっては、独居患者では疾患管理だけでなく、「誰が異変に気づき、どこへ連絡し、どのように医療へつなぐか」を具体化しておくことが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:82歳・男性居住地:名古屋市内世帯構成:独居キーパーソン:長女(別居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療制度介護保険:要介護2
診断名
・慢性心不全・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・高血圧症・脂質異常症
導入の背景
慢性心不全とCOPDに対して外来通院を継続していたが、徐々に労作時呼吸困難が増強し、病状悪化による入院を繰り返すようになっていた。
入院治療によって症状は改善するものの、退院後も継続的な病状管理が必要であった。一方、歩行距離の低下と呼吸困難により公共交通機関を利用した外来受診が難しくなり、通院そのものが大きな負担となっていた。
本人は独居であり、体調が悪化した際に自ら受診の必要性を判断し、医療機関へつながることにも不安があった。また、服薬忘れや、呼吸困難時に食事の準備や買い物が難しくなるなど、生活面にも影響がみられていた。
別居する長女は定期的に支援していたが、就労や家庭の事情から日常的な見守りを担うことは難しかった。
本人には、可能な限り入院を繰り返さず、住み慣れた自宅で生活したいという希望があった。このため、訪問診療を中心に訪問看護、訪問介護、福祉用具を組み合わせ、病状変化を早期に把握できる体制を整える目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、心不全とCOPDの病状だけでなく、独居生活を継続するうえでの生活上のリスクも含めて評価した。
本人は身の回りのことを一定程度自分で行えていたものの、呼吸困難が強い日は食事の準備、入浴、買い物などが負担となっていた。また、多剤服用により服薬状況が不安定となることもあった。
訪問看護では、血圧、脈拍、体重、SpO₂、浮腫、呼吸状態などを継続的に確認し、心不全やCOPDの増悪兆候を早期に捉える体制を整えた。訪問介護では買い物や清掃などを支援し、本人が無理をして生活行為を続けることによる負担軽減を図った。
その後、体重増加と下肢浮腫、労作時呼吸困難の増悪がみられた際には、訪問看護から訪問診療へ速やかに情報共有が行われた。臨時往診を実施し、心不全増悪を疑って利尿薬を調整したところ、呼吸状態と浮腫は改善した。
一方、本人には入院をできるだけ避けたいという希望がある一方、長女には独居中の急変を発見できないことへの強い不安があった。
このため、在宅療養を基本としながらも、急激な呼吸困難、意識状態の変化、経口摂取困難などがみられた場合には、本人の状態と意向を確認したうえで救急搬送や入院を検討することを本人、長女、多職種で共有した。
また、長女が不在でも支援者が異変を把握できるよう、訪問看護から医療へ連絡する基準や緊急時の連絡経路を整理した。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
対応内容
・血圧、脈拍、体重、SpO₂の継続的な確認・下肢浮腫や体重増加など心不全増悪兆候の評価・呼吸困難、咳嗽、喀痰などCOPD症状の確認・服薬状況の確認と服薬支援・心不全増悪時の利尿薬等の薬剤調整・在宅酸素療法下での呼吸状態の管理・訪問看護からの状態変化の早期共有・訪問介護と連携した生活状況の把握・長女への病状説明および療養方針の共有・急変時の相談、受診、救急搬送の基準共有・本人の希望を踏まえた療養場所の継続的な検討
医療処置
・在宅酸素療法
支援のポイント
・独居患者では、疾患管理と生活支援を分けず、一体的に評価する・体重増加、浮腫、呼吸困難、SpO₂低下など、増悪を疑う変化を支援者間で具体的に共有する・本人が体調変化を感じた際に、誰へ連絡すればよいかを明確にする・服薬、食事、買い物など、体調悪化によって生活上できなくなることを早期に把握する・別居家族による毎日の見守りを前提とせず、訪問看護や訪問介護を組み合わせる・本人の「入院したくない」という希望と、家族の安全面への不安の双方を確認する・在宅療養を選択していても、病状に応じて救急搬送や入院が必要となる可能性を事前に共有する
考察
本症例は、心不全とCOPDによる入退院を繰り返す独居高齢者に対し、本人の在宅生活継続の希望を尊重しながら、多職種で病状悪化を早期に把握する体制を構築した事例である。
心不全やCOPDでは、安定した状態から短期間で症状が悪化することがある。特に独居では、本人が変化を軽く考えて相談を遅らせたり、体調悪化によって服薬や食事などの日常管理そのものが崩れたりする可能性がある。そのため、定期的な医学的評価だけでなく、日常生活の中で起きている変化を複数の支援者が把握することが重要となる。
本症例では、訪問看護が体重増加、浮腫、呼吸困難の変化を捉え、訪問診療へ速やかにつないだことで、在宅で薬剤調整を行うことができた。独居支援では、単にサービスを増やすこと以上に、「誰が異変を発見し、どこへ連絡し、その後誰が対応するのか」という導線を明確にすることが重要である。
また、本人が入院を避けたいと希望していても、在宅療養の目標を「入院させないこと」に固定することは適切ではない。病状によっては入院が本人にとって安全で負担の少ない選択となる場合もあるため、安定している段階から急変時の対応について本人・家族と共有しておく必要がある。
ケアマネジャーにとっては、本人の自立や在宅生活への希望を尊重しながら、病状悪化を先回りして想定し、医療・看護・介護・家族がそれぞれ担う役割を具体化することが重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、循環器内科・病態・症状:心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)・世帯構成:独居
在宅医療相談窓口
※在宅医療の新規相談は、担当相談員に直接お電話いただくとスムーズです。下記の該当エリアをご参照の上、ご連絡ください。
在宅医療関するお問い合わせ・ご相談はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17958/XXXX )
大塚相談員 担当エリア:緑区・東区・昭和区・西区・中川区・守山区
TEL:080-4897-4613 ( tel:08048974613 )
佐藤相談員担当エリア:熱田区・港区・中村区・名東区・北区
TEL:080-4897-4673 ( tel:08048974673 )
渡邉相談員 担当エリア:千種区・瑞穂区・南区・天白区・中区
TEL:080-3595-8467 ( tel:08035958467 )
当院の在宅医療のホームページ 詳細はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17959/XXXX )
ちくさ病院のメールマガジン!
地域の医療介護の最前線で奮闘されている皆様へ
ちくさ病院のメルマガをお読みいただきありがとうございます。このメルマガでは、在宅医療に関する情報を中心に、医療介護に関する情報やお仕事に役立つ実践的なノウハウなど、平日毎日配信しています。
メルマガの特徴
・コラム:医療介護に従事する方々のお仕事に役立つ豆知識のご紹介
・実践的なケーススタディ: 実際の在宅診療の事例紹介や多職種連携のポイントを紹介
・医療介護制度の解説: 医療介護制度の最新情報や活用のコツをお伝え
・ちくさ病院の取り組み: 地域の在宅医療を支える訪問診療体制や当院の地域への働きかけのご紹介
皆様の日々の業務に少しでもお役に立てれば幸いです。ご質問やご要望がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。共に地域の在宅医療を支えていきましょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
バックナンバー ( https://w.bme.jp/38/3135/17960/XXXX )
Instagram ( https://w.bme.jp/38/3135/17961/XXXX )
Facebook ( https://w.bme.jp/38/3135/17962/XXXX )
YouTube ( https://w.bme.jp/38/3135/17963/XXXX )
X ( https://w.bme.jp/38/3135/17964/XXXX )
このメールマガジンは、当院の医師、職員と名刺交換させていただいた方に配信しています。今後の配信を希望されない場合は下記リンクより配信停止が行えます。
配信停止 XXXX
発行元
医療法人豊隆会 ちくさ病院
在宅医療推進部
Copyright © 2019 Chikusa Hospital All Rights Reserved.
ちくさ病院 メールマガジン
vol.1772
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
慢性心不全とCOPDにより入退院を繰り返していた82歳独居男性に対し、通院困難と再入院予防を目的として訪問診療を導入した事例である。退院後は訪問看護、訪問介護、福祉用具を組み合わせ、体重、浮腫、呼吸状態、服薬状況などを継続的に確認する体制を構築した。体重増加と下肢浮腫、呼吸困難の増悪を訪問看護が早期に把握し、臨時往診と薬剤調整につなげた。また、本人の「できる限り自宅で暮らしたい」という希望と、別居する長女の安全面への不安を共有し、必要時には入院も選択肢とする方針を確認した。ケアマネジャーにとっては、独居患者では疾患管理だけでなく、「誰が異変に気づき、どこへ連絡し、どのように医療へつなぐか」を具体化しておくことが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:82歳・男性居住地:名古屋市内世帯構成:独居キーパーソン:長女(別居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療制度介護保険:要介護2
診断名
・慢性心不全・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・高血圧症・脂質異常症
導入の背景
慢性心不全とCOPDに対して外来通院を継続していたが、徐々に労作時呼吸困難が増強し、病状悪化による入院を繰り返すようになっていた。
入院治療によって症状は改善するものの、退院後も継続的な病状管理が必要であった。一方、歩行距離の低下と呼吸困難により公共交通機関を利用した外来受診が難しくなり、通院そのものが大きな負担となっていた。
本人は独居であり、体調が悪化した際に自ら受診の必要性を判断し、医療機関へつながることにも不安があった。また、服薬忘れや、呼吸困難時に食事の準備や買い物が難しくなるなど、生活面にも影響がみられていた。
別居する長女は定期的に支援していたが、就労や家庭の事情から日常的な見守りを担うことは難しかった。
本人には、可能な限り入院を繰り返さず、住み慣れた自宅で生活したいという希望があった。このため、訪問診療を中心に訪問看護、訪問介護、福祉用具を組み合わせ、病状変化を早期に把握できる体制を整える目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、心不全とCOPDの病状だけでなく、独居生活を継続するうえでの生活上のリスクも含めて評価した。
本人は身の回りのことを一定程度自分で行えていたものの、呼吸困難が強い日は食事の準備、入浴、買い物などが負担となっていた。また、多剤服用により服薬状況が不安定となることもあった。
訪問看護では、血圧、脈拍、体重、SpO₂、浮腫、呼吸状態などを継続的に確認し、心不全やCOPDの増悪兆候を早期に捉える体制を整えた。訪問介護では買い物や清掃などを支援し、本人が無理をして生活行為を続けることによる負担軽減を図った。
その後、体重増加と下肢浮腫、労作時呼吸困難の増悪がみられた際には、訪問看護から訪問診療へ速やかに情報共有が行われた。臨時往診を実施し、心不全増悪を疑って利尿薬を調整したところ、呼吸状態と浮腫は改善した。
一方、本人には入院をできるだけ避けたいという希望がある一方、長女には独居中の急変を発見できないことへの強い不安があった。
このため、在宅療養を基本としながらも、急激な呼吸困難、意識状態の変化、経口摂取困難などがみられた場合には、本人の状態と意向を確認したうえで救急搬送や入院を検討することを本人、長女、多職種で共有した。
また、長女が不在でも支援者が異変を把握できるよう、訪問看護から医療へ連絡する基準や緊急時の連絡経路を整理した。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
対応内容
・血圧、脈拍、体重、SpO₂の継続的な確認・下肢浮腫や体重増加など心不全増悪兆候の評価・呼吸困難、咳嗽、喀痰などCOPD症状の確認・服薬状況の確認と服薬支援・心不全増悪時の利尿薬等の薬剤調整・在宅酸素療法下での呼吸状態の管理・訪問看護からの状態変化の早期共有・訪問介護と連携した生活状況の把握・長女への病状説明および療養方針の共有・急変時の相談、受診、救急搬送の基準共有・本人の希望を踏まえた療養場所の継続的な検討
医療処置
・在宅酸素療法
支援のポイント
・独居患者では、疾患管理と生活支援を分けず、一体的に評価する・体重増加、浮腫、呼吸困難、SpO₂低下など、増悪を疑う変化を支援者間で具体的に共有する・本人が体調変化を感じた際に、誰へ連絡すればよいかを明確にする・服薬、食事、買い物など、体調悪化によって生活上できなくなることを早期に把握する・別居家族による毎日の見守りを前提とせず、訪問看護や訪問介護を組み合わせる・本人の「入院したくない」という希望と、家族の安全面への不安の双方を確認する・在宅療養を選択していても、病状に応じて救急搬送や入院が必要となる可能性を事前に共有する
考察
本症例は、心不全とCOPDによる入退院を繰り返す独居高齢者に対し、本人の在宅生活継続の希望を尊重しながら、多職種で病状悪化を早期に把握する体制を構築した事例である。
心不全やCOPDでは、安定した状態から短期間で症状が悪化することがある。特に独居では、本人が変化を軽く考えて相談を遅らせたり、体調悪化によって服薬や食事などの日常管理そのものが崩れたりする可能性がある。そのため、定期的な医学的評価だけでなく、日常生活の中で起きている変化を複数の支援者が把握することが重要となる。
本症例では、訪問看護が体重増加、浮腫、呼吸困難の変化を捉え、訪問診療へ速やかにつないだことで、在宅で薬剤調整を行うことができた。独居支援では、単にサービスを増やすこと以上に、「誰が異変を発見し、どこへ連絡し、その後誰が対応するのか」という導線を明確にすることが重要である。
また、本人が入院を避けたいと希望していても、在宅療養の目標を「入院させないこと」に固定することは適切ではない。病状によっては入院が本人にとって安全で負担の少ない選択となる場合もあるため、安定している段階から急変時の対応について本人・家族と共有しておく必要がある。
ケアマネジャーにとっては、本人の自立や在宅生活への希望を尊重しながら、病状悪化を先回りして想定し、医療・看護・介護・家族がそれぞれ担う役割を具体化することが重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、循環器内科・病態・症状:心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)・世帯構成:独居
在宅医療相談窓口
※在宅医療の新規相談は、担当相談員に直接お電話いただくとスムーズです。下記の該当エリアをご参照の上、ご連絡ください。
在宅医療関するお問い合わせ・ご相談はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17958/XXXX )
大塚相談員 担当エリア:緑区・東区・昭和区・西区・中川区・守山区
TEL:080-4897-4613 ( tel:08048974613 )
佐藤相談員担当エリア:熱田区・港区・中村区・名東区・北区
TEL:080-4897-4673 ( tel:08048974673 )
渡邉相談員 担当エリア:千種区・瑞穂区・南区・天白区・中区
TEL:080-3595-8467 ( tel:08035958467 )
当院の在宅医療のホームページ 詳細はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17959/XXXX )
ちくさ病院のメールマガジン!
地域の医療介護の最前線で奮闘されている皆様へ
ちくさ病院のメルマガをお読みいただきありがとうございます。このメルマガでは、在宅医療に関する情報を中心に、医療介護に関する情報やお仕事に役立つ実践的なノウハウなど、平日毎日配信しています。
メルマガの特徴
・コラム:医療介護に従事する方々のお仕事に役立つ豆知識のご紹介
・実践的なケーススタディ: 実際の在宅診療の事例紹介や多職種連携のポイントを紹介
・医療介護制度の解説: 医療介護制度の最新情報や活用のコツをお伝え
・ちくさ病院の取り組み: 地域の在宅医療を支える訪問診療体制や当院の地域への働きかけのご紹介
皆様の日々の業務に少しでもお役に立てれば幸いです。ご質問やご要望がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。共に地域の在宅医療を支えていきましょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
バックナンバー ( https://w.bme.jp/38/3135/17960/XXXX )
Instagram ( https://w.bme.jp/38/3135/17961/XXXX )
Facebook ( https://w.bme.jp/38/3135/17962/XXXX )
YouTube ( https://w.bme.jp/38/3135/17963/XXXX )
X ( https://w.bme.jp/38/3135/17964/XXXX )
このメールマガジンは、当院の医師、職員と名刺交換させていただいた方に配信しています。今後の配信を希望されない場合は下記リンクより配信停止が行えます。
配信停止 XXXX
発行元
医療法人豊隆会 ちくさ病院
在宅医療推進部
Copyright © 2019 Chikusa Hospital All Rights Reserved.