個人宅 訪問診療導入事例「独居生活の継続を希望するCOPD・心不全患者に対し、本人の自立意識を尊重しながら訪問診療を導入した事例」
2026/09/10 (Thu) 07:50
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ちくさ病院 メールマガジン
vol.1762
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
COPD、慢性呼吸不全、心不全を有する76歳独居男性に対し、息切れの増悪や低栄養、身体機能低下によって通院負担が大きくなったことから訪問診療を導入した事例である。本人は「できるだけ人の手を借りずに暮らしたい」という思いが強く、当初は訪問診療にも抵抗感を示していた。在宅医療では、自立を奪うための支援ではなく、現在の生活を維持するために通院負担を減らす方法として訪問診療を位置づけ、本人ができることを残しながら訪問看護や介護サービスを組み合わせた。ケアマネジャーにとっては、ADLだけで訪問診療の必要性を判断せず、通院による負担、家族の実際の支援力、本人の価値観を含めて支援を設計することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:76歳・男性居住地:名古屋市中川区世帯構成:独居キーパーソン:長女(別居・名古屋市内在住)
保険・福祉情報
医療保険:国民健康保険3割介護保険:要介護3
診断名
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・慢性呼吸不全・心不全・低栄養・廃用症候群
導入の背景
妻との死別後も独居生活を継続していた。本人は、人に迷惑をかけず、自分でできることは可能な限り自分で行いたいという思いが強く、体調が悪い場合にも家族や周囲へ支援を求めることには消極的であった。
COPDと心不全に対して外来治療を継続していたが、徐々に息切れが強くなり、買い物や掃除などの日常生活にも時間を要するようになった。外出機会も減少し、食事は簡単なもので済ませることが増え、体重減少や活動性低下もみられるようになった。
長女は定期的に訪問していたものの、就労しているため日常的な支援には限界があった。長男も県外在住であり、連絡は取れるものの、日々の生活支援を担える状況ではなかった。
本人は自力で外来へ通院できることを理由に、当初は訪問診療の必要性を感じていなかった。しかし、室内移動でも息切れがみられ、食事摂取量や体重も低下していたことから、通院そのものが身体的な負担となっている状態であった。
本人の「まだ自分で生活できる」という思いを否定せず、訪問診療を自立できなくなった人のための医療としてではなく、現在の自宅生活を長く続けるために通院負担を減らす方法として説明した。本人の理解が得られたため、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸状態、心不全症状、食事摂取状況、体重、活動状況などを継続的に確認した。
自宅を訪問することで、外来診療では把握しにくかった室内での移動状況や食生活、日常生活上の負担についても確認できるようになった。息切れや活動性低下については、COPDや心不全の病状だけでなく、低栄養や廃用の影響も含めて評価した。
本人は自分でできることを維持したいという意向が強かったため、すべての生活行為を介護サービスへ置き換えるのではなく、本人が継続できる行動を残しながら、困難となった部分に訪問看護や介護サービスを組み合わせる方針とした。
長女についても、本人の体調が悪化した際に自分だけで受診や救急搬送の必要性を判断しなければならないことに不安を感じていた。訪問診療導入後は医療面について相談できる窓口が明確となり、長女の心理的な負担軽減にもつながった。
結果として、本人は外来通院による身体的負担を減らしながら、住み慣れた自宅での独居生活を継続できる体制を整えることができた。
医療対応の詳細
主病
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全、心不全
対応内容
・呼吸状態および息切れの継続的な評価・心不全症状の確認・食事摂取量、体重、栄養状態の評価・活動量およびADLの確認・低栄養、廃用の進行を見据えた生活状況の評価・訪問看護、介護サービスとの連携・本人の自立意識を踏まえた支援内容の調整・長女への病状説明および急変時の相談体制の共有・独居生活継続を見据えた医療・介護体制の調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・外来へ行けるかどうかだけでなく、通院によってどの程度身体的負担が生じているかを評価する・本人のサービス拒否を単純な拒否として捉えず、その背景にある自立心や家族へ負担をかけたくないという価値観を確認する・「できなくなったから支援する」のではなく、「できている生活を維持するために支援する」という目的を本人と共有する・本人ができる生活行為まで介助へ置き換えず、自立して行える部分を残した支援を設計する・家族がいる場合でも、就労状況や居住地を確認し、実際にどの程度支援できるかを具体的に把握する・COPDや心不全では日による体調変動があるため、家族やケアマネジャーだけで医療的判断を抱え込まない相談体制を整える・低栄養や活動性低下など、疾患以外の生活上の変化も早期に把握する
考察
本症例は、COPDや心不全の病状だけでなく、本人の強い自立意識と独居生活、家族の支援可能性をどのように両立させるかが課題となった事例である。
訪問診療の必要性は、寝たきりかどうかだけで決まるものではない。外来へ行くこと自体は可能であっても、受診のために大きな身体的負担が生じ、その後の日常生活に影響する状態であれば、通院方法を見直す必要がある。本症例では、室内移動でも息切れが生じる状況となっており、「通院できる」という事実だけでは本人の負担を十分に評価できなかった。
また、支援を望まない背景には、単なるサービスへの拒否ではなく、「人に迷惑をかけたくない」「自分でできることは自分でしたい」という本人なりの価値観があった。その価値観を否定せず、訪問診療を自立を失った結果としてではなく、自立した生活を維持するための手段として説明したことが導入につながった。
家族についても、長女や長男が存在することと、日常的な介護を担えることは同じではない。本症例では、訪問診療が本人への医療提供だけでなく、遠方や就労中の家族が医療判断を一人で抱え込まないための相談先としても機能した。
ケアマネジャーにとっては、本人のADL、疾患、家族構成だけを個別に見るのではなく、本人が大切にしている生活、通院に伴う負担、家族が現実的に担える支援を一体的に評価し、「今の暮らしを続けるために何を補うか」という視点で支援を組み立てることが重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、循環器内科・病態・症状:COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心不全・世帯構成:独居
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COPD、慢性呼吸不全、心不全を有する76歳独居男性に対し、息切れの増悪や低栄養、身体機能低下によって通院負担が大きくなったことから訪問診療を導入した事例である。本人は「できるだけ人の手を借りずに暮らしたい」という思いが強く、当初は訪問診療にも抵抗感を示していた。在宅医療では、自立を奪うための支援ではなく、現在の生活を維持するために通院負担を減らす方法として訪問診療を位置づけ、本人ができることを残しながら訪問看護や介護サービスを組み合わせた。ケアマネジャーにとっては、ADLだけで訪問診療の必要性を判断せず、通院による負担、家族の実際の支援力、本人の価値観を含めて支援を設計することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:76歳・男性居住地:名古屋市中川区世帯構成:独居キーパーソン:長女(別居・名古屋市内在住)
保険・福祉情報
医療保険:国民健康保険3割介護保険:要介護3
診断名
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・慢性呼吸不全・心不全・低栄養・廃用症候群
導入の背景
妻との死別後も独居生活を継続していた。本人は、人に迷惑をかけず、自分でできることは可能な限り自分で行いたいという思いが強く、体調が悪い場合にも家族や周囲へ支援を求めることには消極的であった。
COPDと心不全に対して外来治療を継続していたが、徐々に息切れが強くなり、買い物や掃除などの日常生活にも時間を要するようになった。外出機会も減少し、食事は簡単なもので済ませることが増え、体重減少や活動性低下もみられるようになった。
長女は定期的に訪問していたものの、就労しているため日常的な支援には限界があった。長男も県外在住であり、連絡は取れるものの、日々の生活支援を担える状況ではなかった。
本人は自力で外来へ通院できることを理由に、当初は訪問診療の必要性を感じていなかった。しかし、室内移動でも息切れがみられ、食事摂取量や体重も低下していたことから、通院そのものが身体的な負担となっている状態であった。
本人の「まだ自分で生活できる」という思いを否定せず、訪問診療を自立できなくなった人のための医療としてではなく、現在の自宅生活を長く続けるために通院負担を減らす方法として説明した。本人の理解が得られたため、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸状態、心不全症状、食事摂取状況、体重、活動状況などを継続的に確認した。
自宅を訪問することで、外来診療では把握しにくかった室内での移動状況や食生活、日常生活上の負担についても確認できるようになった。息切れや活動性低下については、COPDや心不全の病状だけでなく、低栄養や廃用の影響も含めて評価した。
本人は自分でできることを維持したいという意向が強かったため、すべての生活行為を介護サービスへ置き換えるのではなく、本人が継続できる行動を残しながら、困難となった部分に訪問看護や介護サービスを組み合わせる方針とした。
長女についても、本人の体調が悪化した際に自分だけで受診や救急搬送の必要性を判断しなければならないことに不安を感じていた。訪問診療導入後は医療面について相談できる窓口が明確となり、長女の心理的な負担軽減にもつながった。
結果として、本人は外来通院による身体的負担を減らしながら、住み慣れた自宅での独居生活を継続できる体制を整えることができた。
医療対応の詳細
主病
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全、心不全
対応内容
・呼吸状態および息切れの継続的な評価・心不全症状の確認・食事摂取量、体重、栄養状態の評価・活動量およびADLの確認・低栄養、廃用の進行を見据えた生活状況の評価・訪問看護、介護サービスとの連携・本人の自立意識を踏まえた支援内容の調整・長女への病状説明および急変時の相談体制の共有・独居生活継続を見据えた医療・介護体制の調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・外来へ行けるかどうかだけでなく、通院によってどの程度身体的負担が生じているかを評価する・本人のサービス拒否を単純な拒否として捉えず、その背景にある自立心や家族へ負担をかけたくないという価値観を確認する・「できなくなったから支援する」のではなく、「できている生活を維持するために支援する」という目的を本人と共有する・本人ができる生活行為まで介助へ置き換えず、自立して行える部分を残した支援を設計する・家族がいる場合でも、就労状況や居住地を確認し、実際にどの程度支援できるかを具体的に把握する・COPDや心不全では日による体調変動があるため、家族やケアマネジャーだけで医療的判断を抱え込まない相談体制を整える・低栄養や活動性低下など、疾患以外の生活上の変化も早期に把握する
考察
本症例は、COPDや心不全の病状だけでなく、本人の強い自立意識と独居生活、家族の支援可能性をどのように両立させるかが課題となった事例である。
訪問診療の必要性は、寝たきりかどうかだけで決まるものではない。外来へ行くこと自体は可能であっても、受診のために大きな身体的負担が生じ、その後の日常生活に影響する状態であれば、通院方法を見直す必要がある。本症例では、室内移動でも息切れが生じる状況となっており、「通院できる」という事実だけでは本人の負担を十分に評価できなかった。
また、支援を望まない背景には、単なるサービスへの拒否ではなく、「人に迷惑をかけたくない」「自分でできることは自分でしたい」という本人なりの価値観があった。その価値観を否定せず、訪問診療を自立を失った結果としてではなく、自立した生活を維持するための手段として説明したことが導入につながった。
家族についても、長女や長男が存在することと、日常的な介護を担えることは同じではない。本症例では、訪問診療が本人への医療提供だけでなく、遠方や就労中の家族が医療判断を一人で抱え込まないための相談先としても機能した。
ケアマネジャーにとっては、本人のADL、疾患、家族構成だけを個別に見るのではなく、本人が大切にしている生活、通院に伴う負担、家族が現実的に担える支援を一体的に評価し、「今の暮らしを続けるために何を補うか」という視点で支援を組み立てることが重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、循環器内科・病態・症状:COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心不全・世帯構成:独居
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発行元
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