個人宅 訪問診療導入事例「本人への病名説明をめぐる家族の葛藤に寄り添いながら、在宅緩和ケアを継続した肺がん終末期の事例」
2026/08/07 (Fri) 07:50
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ちくさ病院 メールマガジン
vol.1738
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
右肺腺がん、がん性胸水、慢性心不全、軽度認知症を有する85歳女性に対し、緩和ケアを中心とした訪問診療を導入した事例である。本人には肺がんであることを明確に伝えておらず、家族は説明のあり方について葛藤を抱えていた。在宅医療では、オピオイドや在宅酸素療法による呼吸苦・疼痛の緩和、褥瘡処置、24時間相談体制の整備を行い、本人が家族と穏やかに過ごせる環境を支援した。ケアマネジャーにとっては、病名告知の是非のみを論点とせず、本人がどこまで知りたいと考えているかを継続的に確認しながら、本人の安心と家族の葛藤の双方を支える視点が重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:85歳・女性居住地:名古屋市天白区世帯構成:親子キーパーソン:長女(別居・近隣在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割介護保険:要介護3
診断名
・右肺腺がん(StageⅣ)・がん性胸水・慢性心不全・軽度認知症
導入の背景
軽度認知症と慢性心不全のため近隣医療機関へ通院していたが、咳嗽と息切れが目立つようになった。胸部CTで右肺に腫瘤影が認められ、基幹病院での精査により右肺腺がんとがん性胸水と診断された。
高齢で全身状態も低下していたことから、積極的な抗がん治療は困難と判断された。胸水貯留による呼吸苦に対して胸腔ドレナージが行われ、その後、再貯留を抑える目的で胸膜癒着術が実施された。
家族には病状と今後の見通しが説明されていたが、本人には肺の病気と伝えられており、がんであることは明確に説明されていなかった。長女は、病名を伝えることで本人の不安が強まるのではないかと考える一方、このまま伝えないことが適切なのか葛藤を抱えていた。
本人は住み慣れた自宅で夫と過ごすことを希望し、家族も通院を繰り返すより自宅で穏やかに過ごしてほしいと考えていた。このため、呼吸苦や疼痛の緩和と家族支援を行いながら、在宅療養を継続する目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸状態、疼痛、食事摂取量、全身状態などを継続的に確認し、緩和ケアを中心に診療を行った。
呼吸苦と胸部痛に対してオピオイドを調整し、必要時には在宅酸素療法を併用した。訪問看護とも連携し、褥瘡処置や全身状態の観察を継続したことで、自宅で無理なく過ごせる療養環境を整えた。
軽度認知症があり、本人から病状について詳しく尋ねることは少なかった。一方で、医療者は本人が病状をどこまで知りたいと考えているか、何を不安に感じているかを、日々の会話や反応から継続的に確認した。
長女に対しては、病名を伝えたか否かだけで判断するのではなく、本人にとって何が安心につながるのかを一緒に考える面談を重ねた。高齢の夫や在宅勤務をしながら介護を担う次男にも、症状変化や相談方法を説明した。
24時間相談できる体制を整えたことで、家族の不安は軽減し、本人との時間を大切にしながら在宅療養を継続できるようになった。
医療対応の詳細
主病
右肺腺がん、がん性胸水、慢性心不全、軽度認知症
対応内容
・呼吸状態、疼痛、食事摂取量および全身状態の継続的評価・オピオイド調整による呼吸苦および胸部痛の緩和・在宅酸素療法による呼吸状態の管理・訪問看護と連携した褥瘡管理・本人の理解力と意向に配慮した病状説明・病名説明をめぐる家族の葛藤への継続的支援・急変時を含めた24時間相談体制の整備・在宅看取りを見据えた家族との療養方針共有
医療処置
・在宅酸素療法・褥瘡処置・症状緩和を目的とした薬物調整
支援のポイント
・家族の意向だけで説明方針を固定せず、本人が病状をどこまで知りたいかを継続的に確認する・告知するか否かの二択ではなく、本人の理解力や不安に応じて説明内容と伝え方を調整する・家族が抱く「この選択でよかったのか」という葛藤も支援対象として捉える・呼吸苦や疼痛への対応方法と相談先を明確にし、家族が急変時の判断を抱え込まない体制を作る・高齢の夫と介護を担う次男の負担を確認し、家族内で役割が集中しないよう調整する・緩和ケアを治療の中止ではなく、本人が望む生活を支える医療として家族と共有する
考察
本症例は、肺がん終末期の症状管理に加え、本人への病名説明をめぐる家族の葛藤が大きな支援課題となった事例である。
認知機能低下がある場合でも、本人がどこまで病状を知りたいと考えているかを確認する姿勢は必要である。家族が本人を不安にさせたくないと考えることは自然であるが、その意向のみで説明方針を固定すると、本人の知る権利や意思決定の機会が失われる可能性もある。そのため、本人の理解力、問いかけ、表情や反応を確認しながら、必要な情報を段階的に伝える視点が重要である。
本症例では、オピオイドや在宅酸素療法、褥瘡処置などの医療的支援に加え、家族との面談と24時間相談体制を整えたことで、本人が自宅で穏やかに過ごせる環境を構築できた。ケアマネジャーにとっては、病状説明の結論を出すことだけでなく、本人と家族が抱える不安や迷いを多職種で共有し、継続的に意思決定を支えることが重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、緩和ケア科・病態・症状:がん、心不全、認知症・世帯構成:親子
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基本情報
年齢・性別:85歳・女性居住地:名古屋市天白区世帯構成:親子キーパーソン:長女(別居・近隣在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割介護保険:要介護3
診断名
・右肺腺がん(StageⅣ)・がん性胸水・慢性心不全・軽度認知症
導入の背景
軽度認知症と慢性心不全のため近隣医療機関へ通院していたが、咳嗽と息切れが目立つようになった。胸部CTで右肺に腫瘤影が認められ、基幹病院での精査により右肺腺がんとがん性胸水と診断された。
高齢で全身状態も低下していたことから、積極的な抗がん治療は困難と判断された。胸水貯留による呼吸苦に対して胸腔ドレナージが行われ、その後、再貯留を抑える目的で胸膜癒着術が実施された。
家族には病状と今後の見通しが説明されていたが、本人には肺の病気と伝えられており、がんであることは明確に説明されていなかった。長女は、病名を伝えることで本人の不安が強まるのではないかと考える一方、このまま伝えないことが適切なのか葛藤を抱えていた。
本人は住み慣れた自宅で夫と過ごすことを希望し、家族も通院を繰り返すより自宅で穏やかに過ごしてほしいと考えていた。このため、呼吸苦や疼痛の緩和と家族支援を行いながら、在宅療養を継続する目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸状態、疼痛、食事摂取量、全身状態などを継続的に確認し、緩和ケアを中心に診療を行った。
呼吸苦と胸部痛に対してオピオイドを調整し、必要時には在宅酸素療法を併用した。訪問看護とも連携し、褥瘡処置や全身状態の観察を継続したことで、自宅で無理なく過ごせる療養環境を整えた。
軽度認知症があり、本人から病状について詳しく尋ねることは少なかった。一方で、医療者は本人が病状をどこまで知りたいと考えているか、何を不安に感じているかを、日々の会話や反応から継続的に確認した。
長女に対しては、病名を伝えたか否かだけで判断するのではなく、本人にとって何が安心につながるのかを一緒に考える面談を重ねた。高齢の夫や在宅勤務をしながら介護を担う次男にも、症状変化や相談方法を説明した。
24時間相談できる体制を整えたことで、家族の不安は軽減し、本人との時間を大切にしながら在宅療養を継続できるようになった。
医療対応の詳細
主病
右肺腺がん、がん性胸水、慢性心不全、軽度認知症
対応内容
・呼吸状態、疼痛、食事摂取量および全身状態の継続的評価・オピオイド調整による呼吸苦および胸部痛の緩和・在宅酸素療法による呼吸状態の管理・訪問看護と連携した褥瘡管理・本人の理解力と意向に配慮した病状説明・病名説明をめぐる家族の葛藤への継続的支援・急変時を含めた24時間相談体制の整備・在宅看取りを見据えた家族との療養方針共有
医療処置
・在宅酸素療法・褥瘡処置・症状緩和を目的とした薬物調整
支援のポイント
・家族の意向だけで説明方針を固定せず、本人が病状をどこまで知りたいかを継続的に確認する・告知するか否かの二択ではなく、本人の理解力や不安に応じて説明内容と伝え方を調整する・家族が抱く「この選択でよかったのか」という葛藤も支援対象として捉える・呼吸苦や疼痛への対応方法と相談先を明確にし、家族が急変時の判断を抱え込まない体制を作る・高齢の夫と介護を担う次男の負担を確認し、家族内で役割が集中しないよう調整する・緩和ケアを治療の中止ではなく、本人が望む生活を支える医療として家族と共有する
考察
本症例は、肺がん終末期の症状管理に加え、本人への病名説明をめぐる家族の葛藤が大きな支援課題となった事例である。
認知機能低下がある場合でも、本人がどこまで病状を知りたいと考えているかを確認する姿勢は必要である。家族が本人を不安にさせたくないと考えることは自然であるが、その意向のみで説明方針を固定すると、本人の知る権利や意思決定の機会が失われる可能性もある。そのため、本人の理解力、問いかけ、表情や反応を確認しながら、必要な情報を段階的に伝える視点が重要である。
本症例では、オピオイドや在宅酸素療法、褥瘡処置などの医療的支援に加え、家族との面談と24時間相談体制を整えたことで、本人が自宅で穏やかに過ごせる環境を構築できた。ケアマネジャーにとっては、病状説明の結論を出すことだけでなく、本人と家族が抱える不安や迷いを多職種で共有し、継続的に意思決定を支えることが重要である。
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発行元
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