個人宅 訪問診療導入事例「独居で身寄りのない進行前立腺がん患者に対し、多職種連携により在宅生活継続を支えた訪問診療導入事例」
2026/05/19 (Tue) 07:50
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ちくさ病院 メールマガジン
vol.1682
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
前立腺癌の多発骨転移および脊椎転移により身体機能が低下し、退院後の通院継続が困難となった独居高齢男性に対し、訪問診療を導入した事例である。親族との関係が希薄で緊急連絡先もなく、支援拒否傾向もみられたが、訪問診療を起点に訪問看護、ヘルパー、配食サービス、地域包括支援センター、行政などが連携し、在宅療養体制を構築した。ケアマネジャーにとっては、独居かつ身寄りのない終末期患者に対し、施設入所ありきではなく、本人の意思を起点に地域資源を束ねて支援導線を設計する視点が重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:76歳・男性居住地:名古屋市瑞穂区世帯構成:独居キーパーソン:該当なし
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割負担、福祉給付金資格者証介護保険:要介護3
診断名
・前立腺癌・多発骨転移・脊椎転移
導入の背景
退職後は地域との関わりが少なく、単身で生活していた。足腰の痛みや倦怠感が強くなっていたが、受診を先延ばしにしていた。数日間新聞が溜まっていることを心配した大家が室内確認を行ったところ、自宅内で動けなくなっている本人を発見し、救急搬送となった。精査の結果、進行した前立腺癌の多発骨転移および脊椎転移が判明し、下肢筋力低下に対して緊急で脊椎手術が施行された。術後リハビリを行ったものの、歩行能力の大幅な改善は難しく、車椅子主体の生活となった。病院側では施設入所も検討されたが、本人は最期まで自宅にいたいという意向が強く、施設入所を拒否していた。一方で、親族とは長年疎遠で、緊急連絡先もなく、金銭管理、内服管理、食事準備、受診継続、緊急時対応など多くの課題を抱えていた。こうした背景から、医療的見守りを継続しつつ地域サービスを多層的に導入する必要があると判断され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
退院前カンファレンスには、訪問診療、訪問看護、ヘルパー、配食サービス、福祉用具、地域包括支援センター、成年後見制度の相談窓口などが参加し、役割分担を整理した。本人には他者不信が強く、新しい支援者を受け入れることに強い抵抗がみられたため、退院前から相談員が複数回病室を訪問し、自宅で生活を続けるために必要な支援であることを繰り返し説明した。初回訪問診療時は、医師、相談員、訪問看護師が同行し、診療だけでなく雑談も交えながら関係構築を行った。疼痛に対してはオピオイド調整を実施し、骨転移による夜間痛が軽減したことで睡眠が安定し、日中の苛立ちも減少した。また、訪問ごとに診療レポートをケアマネジャーや関係事業所へ共有し、食欲低下、排泄状況、疼痛変化、精神状態、サービス拒否傾向などを早期に把握できる体制を整えた。その後はヘルパー受け入れも徐々に安定し、在宅生活継続に必要な支援が段階的に定着した。
医療対応の詳細
主病
前立腺癌、多発骨転移、脊椎転移
対応内容
・骨転移に伴う疼痛の評価と薬物調整・全身状態および生活機能の継続的評価・訪問看護と連携した排泄管理および日常生活支援・精神的拒否感に配慮した関係構築・多職種間での情報共有による在宅療養支援
医療処置
・疼痛管理(オピオイド)・排泄管理
支援のポイント
・独居かつ身寄りのない終末期患者であっても、本人の在宅希望を前提に支援方法を具体化する・支援拒否がある場合は、医療介入を信頼関係構築の入口として活用する・疼痛緩和など本人が効果を実感しやすい支援から導入し、他サービス受容につなげる・緊急連絡先不在のケースでは、医療、介護、行政の役割分担を明確にして空白を作らない・診療レポート共有などを通じて、多職種間の情報共有タイムラグを減らし、孤立を防ぐ・成年後見制度や行政相談を含め、生活管理面の支援導線も早期に整える
考察
本症例は、独居高齢者で身寄りが乏しく、支援拒否傾向もある終末期患者に対して、訪問診療が在宅生活継続の基盤となった事例である。緊急時対応者不在、意思決定支援の難しさ、金銭や生活管理の不安定さ、サービス拒否といった要素が重なると、在宅継続は極めて不安定となる。一方で、本人が自宅で暮らしたいという意思を明確に持っている場合、医療、介護、行政が連携し、役割を分担することで在宅生活を支えられる可能性がある。本事例では、訪問診療が単なる医療提供にとどまらず、地域との接点として機能し、本人の孤立を防ぎながら在宅療養継続を支えた点に意義がある。ケアマネジャーにとっては、支援者不在を理由に選択肢を狭めるのではなく、誰が何を担うかを具体化し、地域全体で支える導線を設計することが重要である。
付記情報
・診療科:内科、泌尿器科・病態・症状:前立腺癌、多発骨転移、脊椎転移、下肢筋力低下、疼痛、支援拒否傾向・世帯構成:独居
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発行元
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基本情報
年齢・性別:76歳・男性居住地:名古屋市瑞穂区世帯構成:独居キーパーソン:該当なし
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割負担、福祉給付金資格者証介護保険:要介護3
診断名
・前立腺癌・多発骨転移・脊椎転移
導入の背景
退職後は地域との関わりが少なく、単身で生活していた。足腰の痛みや倦怠感が強くなっていたが、受診を先延ばしにしていた。数日間新聞が溜まっていることを心配した大家が室内確認を行ったところ、自宅内で動けなくなっている本人を発見し、救急搬送となった。精査の結果、進行した前立腺癌の多発骨転移および脊椎転移が判明し、下肢筋力低下に対して緊急で脊椎手術が施行された。術後リハビリを行ったものの、歩行能力の大幅な改善は難しく、車椅子主体の生活となった。病院側では施設入所も検討されたが、本人は最期まで自宅にいたいという意向が強く、施設入所を拒否していた。一方で、親族とは長年疎遠で、緊急連絡先もなく、金銭管理、内服管理、食事準備、受診継続、緊急時対応など多くの課題を抱えていた。こうした背景から、医療的見守りを継続しつつ地域サービスを多層的に導入する必要があると判断され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
退院前カンファレンスには、訪問診療、訪問看護、ヘルパー、配食サービス、福祉用具、地域包括支援センター、成年後見制度の相談窓口などが参加し、役割分担を整理した。本人には他者不信が強く、新しい支援者を受け入れることに強い抵抗がみられたため、退院前から相談員が複数回病室を訪問し、自宅で生活を続けるために必要な支援であることを繰り返し説明した。初回訪問診療時は、医師、相談員、訪問看護師が同行し、診療だけでなく雑談も交えながら関係構築を行った。疼痛に対してはオピオイド調整を実施し、骨転移による夜間痛が軽減したことで睡眠が安定し、日中の苛立ちも減少した。また、訪問ごとに診療レポートをケアマネジャーや関係事業所へ共有し、食欲低下、排泄状況、疼痛変化、精神状態、サービス拒否傾向などを早期に把握できる体制を整えた。その後はヘルパー受け入れも徐々に安定し、在宅生活継続に必要な支援が段階的に定着した。
医療対応の詳細
主病
前立腺癌、多発骨転移、脊椎転移
対応内容
・骨転移に伴う疼痛の評価と薬物調整・全身状態および生活機能の継続的評価・訪問看護と連携した排泄管理および日常生活支援・精神的拒否感に配慮した関係構築・多職種間での情報共有による在宅療養支援
医療処置
・疼痛管理(オピオイド)・排泄管理
支援のポイント
・独居かつ身寄りのない終末期患者であっても、本人の在宅希望を前提に支援方法を具体化する・支援拒否がある場合は、医療介入を信頼関係構築の入口として活用する・疼痛緩和など本人が効果を実感しやすい支援から導入し、他サービス受容につなげる・緊急連絡先不在のケースでは、医療、介護、行政の役割分担を明確にして空白を作らない・診療レポート共有などを通じて、多職種間の情報共有タイムラグを減らし、孤立を防ぐ・成年後見制度や行政相談を含め、生活管理面の支援導線も早期に整える
考察
本症例は、独居高齢者で身寄りが乏しく、支援拒否傾向もある終末期患者に対して、訪問診療が在宅生活継続の基盤となった事例である。緊急時対応者不在、意思決定支援の難しさ、金銭や生活管理の不安定さ、サービス拒否といった要素が重なると、在宅継続は極めて不安定となる。一方で、本人が自宅で暮らしたいという意思を明確に持っている場合、医療、介護、行政が連携し、役割を分担することで在宅生活を支えられる可能性がある。本事例では、訪問診療が単なる医療提供にとどまらず、地域との接点として機能し、本人の孤立を防ぎながら在宅療養継続を支えた点に意義がある。ケアマネジャーにとっては、支援者不在を理由に選択肢を狭めるのではなく、誰が何を担うかを具体化し、地域全体で支える導線を設計することが重要である。
付記情報
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発行元
医療法人豊隆会 ちくさ病院
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