パーキンソン病治療のステップと課題
2024/09/19 (Thu) 07:50
パーキンソン病治療のステップと課題
パーキンソン病の初期段階「ハネムーン期」について
パーキンソン病の運動症状を改善するためには、通常、レボドパやドパミンアゴニストなどのドパミン補充薬による治療が行われます。パーキンソン病の症状が現れてから3~5年程度は「ハネムーン期」と呼ばれ、この期間中はレボドパなどの薬物を服用することで、1日を通して安定した効果を得ることができます。
「ハネムーン期」の後に現れる「ウェアリング・オフ」
ハネムーン期が終わると、薬の効果が次第に不十分に感じられるようになります。たとえ1日に3~4回、十分な量のレボドパを服用していても、その効果が切れるタイミングが感じられるようになります。このような現象を「ウェアリング・オフ」と呼び、薬が効いている状態を「オン」、薬の効果が切れた状態を「オフ」と呼びます。
「ウェアリング・オフ」と「ジスキネジア」の出現
患者によっては、ウェアリング・オフが現れる時期と同じ頃に、身体が勝手にくねくねと動く「ジスキネジア」と呼ばれる症状が出現することがあります。初期段階で薬が最も効果を発揮しているときに見られるジスキネジアを「ピークドーズ・ジスキネジア」と呼び、病気が進行して薬が効き始める時や、効果が切れかけた時に見られるものを「バイフェイジック・ジスキネジア」または「ダイフェイジック・ジスキネジア」と呼びます。
ウェアリング・オフの進行と日常生活への影響
ウェアリング・オフが初期段階では、わずかな動きにくさを感じる程度ですが、次第にその影響が強くなり、オフの時間帯には動作が非常に緩慢になることがあります。このような状態では、オフがいつ訪れるか予測しにくくなり、オンの時には問題なく動けていた人が、突然オフになってしまい動けなくなることがあります。これにより、買い物などの外出中に動けなくなる不安が生じ、外出自体が難しくなるなど、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
ウェアリング・オフのメカニズム
ウェアリング・オフやジスキネジアが発生する原因は、ドパミン神経細胞の減少にあります。病気の初期段階では、まだドパミン神経が比較的残っているため、レボドパから生成されたドパミンを一時的に貯蔵し、必要に応じて使用することが可能です。しかし、病気が進行するにつれてドパミン神経が減少し、ドパミンを十分に貯蔵することが難しくなります。その結果、薬の服用間隔中にドパミンを使い切ってしまい、ドパミン欠乏状態が生じ、これがウェアリング・オフの原因となります。
さらに、ドパミン神経が減少している状態では、薬の効果を保つために、レボドパの投与量が増える傾向があります。しかし、ドパミン神経が処理できる限界を超えたレボドパは、他の細胞でドパミンに変換され、貯蔵庫がないためドパミンが過剰に存在する「オーバーフロー」状態が生じます。これがジスキネジアを引き起こす原因となります。
パーキンソン病の薬物療法の基本について
最後に、パーキンソン病の薬物療法をおさらいしましょう。
ドパミン系薬剤
L-ドパ: パーキンソン病の治療の主軸となる薬剤で、脳内でドパミンに変換され効果を発揮します。効果は迅速で、ほとんどの患者に有効ですが、長期使用により運動合併症が生じる可能性があります。
ドパミンアゴニスト: ドパミン受容体作動薬とも呼ばれ、脳内でドパミンと同様にドパミン受容体に結合して効果を発揮します。L-ドパと比べて運動合併症が少ないものの、それぞれの薬に特有の注意点があるため、患者ごとに使い分けられています。
非ドパミン系薬剤
MAO-B阻害薬: ドパミンの脳内滞在時間を延ばします。
COMT阻害薬: 脳内へのL-ドパの移行を増加させます。
アマンタジン: 脳内のドパミン神経からのドパミン分泌を促進します。
抗コリン薬: ドパミン減少に伴うアセチルコリンの相対的過剰を抑え、バランスを取ります。
ドロキシドパ: 減少しているノルアドレナリンを補充します。
ゾニサミド: 運動合併症(ウェアリング・オフ)を改善します。
アデノシン受容体拮抗薬: ドパミンと逆の作用をするアデノシンを抑えることで、ドパミンとのバランスを回復します。
まとめ
パーキンソン病の治療は、病気の進行状況や個々の患者の症状に合わせて慎重に行われます。初期段階の「ハネムーン期」では薬物療法が安定して効果を発揮しますが、進行に伴い「ウェアリング・オフ」や「ジスキネジア」などの複雑な症状が現れることがあります。これらの症状に対応するためには、適切な薬の選択や調整が重要です。治療の選択肢を理解し、主治医と密に連携しながら、最適な治療を続けていくことが大切です。
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編集/発行:医療法人豊隆会 ちくさ病院 在宅医療推進部
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パーキンソン病の初期段階「ハネムーン期」について
パーキンソン病の運動症状を改善するためには、通常、レボドパやドパミンアゴニストなどのドパミン補充薬による治療が行われます。パーキンソン病の症状が現れてから3~5年程度は「ハネムーン期」と呼ばれ、この期間中はレボドパなどの薬物を服用することで、1日を通して安定した効果を得ることができます。
「ハネムーン期」の後に現れる「ウェアリング・オフ」
ハネムーン期が終わると、薬の効果が次第に不十分に感じられるようになります。たとえ1日に3~4回、十分な量のレボドパを服用していても、その効果が切れるタイミングが感じられるようになります。このような現象を「ウェアリング・オフ」と呼び、薬が効いている状態を「オン」、薬の効果が切れた状態を「オフ」と呼びます。
「ウェアリング・オフ」と「ジスキネジア」の出現
患者によっては、ウェアリング・オフが現れる時期と同じ頃に、身体が勝手にくねくねと動く「ジスキネジア」と呼ばれる症状が出現することがあります。初期段階で薬が最も効果を発揮しているときに見られるジスキネジアを「ピークドーズ・ジスキネジア」と呼び、病気が進行して薬が効き始める時や、効果が切れかけた時に見られるものを「バイフェイジック・ジスキネジア」または「ダイフェイジック・ジスキネジア」と呼びます。
ウェアリング・オフの進行と日常生活への影響
ウェアリング・オフが初期段階では、わずかな動きにくさを感じる程度ですが、次第にその影響が強くなり、オフの時間帯には動作が非常に緩慢になることがあります。このような状態では、オフがいつ訪れるか予測しにくくなり、オンの時には問題なく動けていた人が、突然オフになってしまい動けなくなることがあります。これにより、買い物などの外出中に動けなくなる不安が生じ、外出自体が難しくなるなど、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
ウェアリング・オフのメカニズム
ウェアリング・オフやジスキネジアが発生する原因は、ドパミン神経細胞の減少にあります。病気の初期段階では、まだドパミン神経が比較的残っているため、レボドパから生成されたドパミンを一時的に貯蔵し、必要に応じて使用することが可能です。しかし、病気が進行するにつれてドパミン神経が減少し、ドパミンを十分に貯蔵することが難しくなります。その結果、薬の服用間隔中にドパミンを使い切ってしまい、ドパミン欠乏状態が生じ、これがウェアリング・オフの原因となります。
さらに、ドパミン神経が減少している状態では、薬の効果を保つために、レボドパの投与量が増える傾向があります。しかし、ドパミン神経が処理できる限界を超えたレボドパは、他の細胞でドパミンに変換され、貯蔵庫がないためドパミンが過剰に存在する「オーバーフロー」状態が生じます。これがジスキネジアを引き起こす原因となります。
パーキンソン病の薬物療法の基本について
最後に、パーキンソン病の薬物療法をおさらいしましょう。
ドパミン系薬剤
L-ドパ: パーキンソン病の治療の主軸となる薬剤で、脳内でドパミンに変換され効果を発揮します。効果は迅速で、ほとんどの患者に有効ですが、長期使用により運動合併症が生じる可能性があります。
ドパミンアゴニスト: ドパミン受容体作動薬とも呼ばれ、脳内でドパミンと同様にドパミン受容体に結合して効果を発揮します。L-ドパと比べて運動合併症が少ないものの、それぞれの薬に特有の注意点があるため、患者ごとに使い分けられています。
非ドパミン系薬剤
MAO-B阻害薬: ドパミンの脳内滞在時間を延ばします。
COMT阻害薬: 脳内へのL-ドパの移行を増加させます。
アマンタジン: 脳内のドパミン神経からのドパミン分泌を促進します。
抗コリン薬: ドパミン減少に伴うアセチルコリンの相対的過剰を抑え、バランスを取ります。
ドロキシドパ: 減少しているノルアドレナリンを補充します。
ゾニサミド: 運動合併症(ウェアリング・オフ)を改善します。
アデノシン受容体拮抗薬: ドパミンと逆の作用をするアデノシンを抑えることで、ドパミンとのバランスを回復します。
まとめ
パーキンソン病の治療は、病気の進行状況や個々の患者の症状に合わせて慎重に行われます。初期段階の「ハネムーン期」では薬物療法が安定して効果を発揮しますが、進行に伴い「ウェアリング・オフ」や「ジスキネジア」などの複雑な症状が現れることがあります。これらの症状に対応するためには、適切な薬の選択や調整が重要です。治療の選択肢を理解し、主治医と密に連携しながら、最適な治療を続けていくことが大切です。
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