個人宅 訪問診療導入事例「通院負担と家族の介護力低下を見据え、専門病院との併診を継続しながら訪問診療を導入した前立腺がん患者の事例」
2026/09/15 (Tue) 07:50
紹介動画.png ( https://w.bme.jp/38/3135/17808/XXXX )
ちくさ病院 メールマガジン
vol.1765
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
多発骨転移を伴う前立腺がんにより慢性疼痛が増悪した84歳男性に対し、通院負担の増加と家族の支援力低下を踏まえて訪問診療を導入した事例である。本人は「まだ通院できる」と訪問診療への切り替えに消極的であったが、受診後の疲労が強く、送迎を担う長女の負担も増大していた。専門病院での定期評価は継続しながら、訪問診療では日常的な体調管理と疼痛コントロールを担う併診体制を構築した。ケアマネジャーにとっては、本人が通院可能かどうかだけでなく、受診に伴う身体的負担や家族の介護力まで含めて訪問診療導入のタイミングを判断することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:84歳・男性居住地:名古屋市名東区世帯構成:夫婦のみキーパーソン:長女(別居・名古屋市内在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割介護保険:要介護2
診断名
・前立腺がん(多発骨転移)・骨転移による慢性疼痛・高血圧症・慢性便秘
導入の背景
健康診断を契機に精査を受け、前立腺がんと多発骨転移が判明した。根治的治療は困難であったが、内分泌療法により病勢は比較的安定しており、専門病院への定期通院を継続していた。
その後、骨転移による腰痛や股関節痛が徐々に増悪し、歩行器を使用しても長距離移動が難しくなった。外来受診自体は継続できていたものの、受診後には強い疲労がみられ、通院が本人の日常生活に与える負担が大きくなっていた。
本人は家族へ迷惑をかけたくないという思いが強く、自分で病院へ通えるうちは訪問診療を利用する必要はないと考えていた。一方、送迎を担う長女は就労との両立が難しくなり、同居する妻も高齢で軽度の認知機能低下があるため、通院同行や日常的な健康管理を十分に担うことは難しい状況であった。
本人、家族、病院主治医、ケアマネジャーで今後の療養体制について話し合い、専門病院との関係を維持しながら、日常的な健康管理や疼痛コントロールは自宅で行う方針となった。このため、専門病院との併診を前提として訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、定期的に疼痛の程度、活動量、食事摂取状況、全身状態などを確認した。
骨転移による疼痛が増悪した際には臨時往診を行い、オピオイドを調整するとともに、便秘などの副作用についても対応した。訪問看護とも連携し、疼痛の変化や活動状況を継続的に把握することで、症状悪化時にも早期に対応できる体制を整えた。
また、食欲低下や便秘などについても自宅で相談できるようになり、症状の程度に応じて治療を調整した。専門的な評価が必要な診療については、引き続き専門病院で受けることとし、訪問診療との役割分担を明確にした。
長女にとっては、すべての体調変化に対して病院受診を調整する必要がなくなり、就労を継続しながら本人を支援しやすい環境となった。妻についても、自宅から医療者へ相談できる体制が整ったことで、日常生活上の不安軽減につながった。
本人も訪問診療を受ける中で、自宅で必要な医療を受けられる安心感を持つようになり、住み慣れた自宅での生活を継続している。
医療対応の詳細
主病
前立腺がん(多発骨転移)
対応内容
・骨転移による疼痛の継続的な評価・オピオイドによる疼痛コントロール・オピオイド使用に伴う便秘などの副作用対策・食事摂取量および全身状態の確認・活動量、歩行状態、ADLの評価・疼痛増悪時の臨時往診・訪問看護との症状変化の共有・専門病院との併診および診療情報共有・妻、長女への病状説明と相談体制の整備
医療処置
・オピオイドによる疼痛管理
支援のポイント
・「通院できるか」だけでなく、受診前後の疲労や日常生活への影響まで確認する・本人が家族へ負担をかけたくないという思いから支援を拒んでいないか、その背景を確認する・送迎を担う家族の就労状況や負担を具体的に把握する・高齢の配偶者が同居していても、身体機能や認知機能を踏まえて実際の介護力を評価する・専門病院との関係を維持することで訪問診療を受け入れやすくなる場合は、併診を選択肢として検討する・日常の症状管理は訪問診療、専門的評価は病院と役割を整理する・疼痛増悪時に自宅から相談・診療につながる体制を早期に整える
考察
本症例は、本人が外来通院を続けること自体は可能であったものの、通院に伴う身体的負担と家族の送迎負担が徐々に大きくなっていた事例である。
訪問診療導入を検討する際には、「一人で病院へ行けるか」「歩行できるか」といったADLだけでは十分ではない。受診によって著しく疲労し、その後の生活に影響が出ている場合や、家族の支援がなければ通院を維持できない場合には、通院可能な段階であっても診療体制を見直す必要がある。
また、本人にとっては、訪問診療へ移行することで専門病院とのつながりが失われることへの不安も導入の障壁となり得る。本症例では、専門病院での定期評価を継続しながら、日常的な症状管理を訪問診療が担う役割分担としたことで、本人の安心感を保ちながら在宅医療へ移行することができた。
ケアマネジャーにとっては、本人の通院能力だけでなく、本人の負担、家族の介護力、既存医療機関との関係を含めて療養体制を評価し、「通えなくなってから」ではなく、無理が生じ始めた段階で訪問診療を検討する視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、泌尿器科、緩和ケア科・病態・症状:がん・世帯構成:夫婦のみ
在宅医療相談窓口
※在宅医療の新規相談は、担当相談員に直接お電話いただくとスムーズです。下記の該当エリアをご参照の上、ご連絡ください。
在宅医療関するお問い合わせ・ご相談はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17809/XXXX )
大塚相談員 担当エリア:緑区・東区・昭和区・西区・中川区・守山区
TEL:080-4897-4613 ( tel:08048974613 )
佐藤相談員担当エリア:熱田区・港区・中村区・名東区・北区
TEL:080-4897-4673 ( tel:08048974673 )
渡邉相談員 担当エリア:千種区・瑞穂区・南区・天白区・中区
TEL:080-3595-8467 ( tel:08035958467 )
当院の在宅医療のホームページ 詳細はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17810/XXXX )
ちくさ病院のメールマガジン!
地域の医療介護の最前線で奮闘されている皆様へ
ちくさ病院のメルマガをお読みいただきありがとうございます。このメルマガでは、在宅医療に関する情報を中心に、医療介護に関する情報やお仕事に役立つ実践的なノウハウなど、平日毎日配信しています。
メルマガの特徴
・コラム:医療介護に従事する方々のお仕事に役立つ豆知識のご紹介
・実践的なケーススタディ: 実際の在宅診療の事例紹介や多職種連携のポイントを紹介
・医療介護制度の解説: 医療介護制度の最新情報や活用のコツをお伝え
・ちくさ病院の取り組み: 地域の在宅医療を支える訪問診療体制や当院の地域への働きかけのご紹介
皆様の日々の業務に少しでもお役に立てれば幸いです。ご質問やご要望がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。共に地域の在宅医療を支えていきましょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
バックナンバー ( https://w.bme.jp/38/3135/17811/XXXX )
Instagram ( https://w.bme.jp/38/3135/17812/XXXX )
Facebook ( https://w.bme.jp/38/3135/17813/XXXX )
YouTube ( https://w.bme.jp/38/3135/17814/XXXX )
X ( https://w.bme.jp/38/3135/17815/XXXX )
このメールマガジンは、当院の医師、職員と名刺交換させていただいた方に配信しています。今後の配信を希望されない場合は下記リンクより配信停止が行えます。
配信停止 XXXX
発行元
医療法人豊隆会 ちくさ病院
在宅医療推進部
Copyright © 2019 Chikusa Hospital All Rights Reserved.
ちくさ病院 メールマガジン
vol.1765
当院の個人宅における訪問診療の事例紹介です。個人宅での訪問診療ご紹介の参考にしていただければ幸いです。
要点サマリー
多発骨転移を伴う前立腺がんにより慢性疼痛が増悪した84歳男性に対し、通院負担の増加と家族の支援力低下を踏まえて訪問診療を導入した事例である。本人は「まだ通院できる」と訪問診療への切り替えに消極的であったが、受診後の疲労が強く、送迎を担う長女の負担も増大していた。専門病院での定期評価は継続しながら、訪問診療では日常的な体調管理と疼痛コントロールを担う併診体制を構築した。ケアマネジャーにとっては、本人が通院可能かどうかだけでなく、受診に伴う身体的負担や家族の介護力まで含めて訪問診療導入のタイミングを判断することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:84歳・男性居住地:名古屋市名東区世帯構成:夫婦のみキーパーソン:長女(別居・名古屋市内在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割介護保険:要介護2
診断名
・前立腺がん(多発骨転移)・骨転移による慢性疼痛・高血圧症・慢性便秘
導入の背景
健康診断を契機に精査を受け、前立腺がんと多発骨転移が判明した。根治的治療は困難であったが、内分泌療法により病勢は比較的安定しており、専門病院への定期通院を継続していた。
その後、骨転移による腰痛や股関節痛が徐々に増悪し、歩行器を使用しても長距離移動が難しくなった。外来受診自体は継続できていたものの、受診後には強い疲労がみられ、通院が本人の日常生活に与える負担が大きくなっていた。
本人は家族へ迷惑をかけたくないという思いが強く、自分で病院へ通えるうちは訪問診療を利用する必要はないと考えていた。一方、送迎を担う長女は就労との両立が難しくなり、同居する妻も高齢で軽度の認知機能低下があるため、通院同行や日常的な健康管理を十分に担うことは難しい状況であった。
本人、家族、病院主治医、ケアマネジャーで今後の療養体制について話し合い、専門病院との関係を維持しながら、日常的な健康管理や疼痛コントロールは自宅で行う方針となった。このため、専門病院との併診を前提として訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、定期的に疼痛の程度、活動量、食事摂取状況、全身状態などを確認した。
骨転移による疼痛が増悪した際には臨時往診を行い、オピオイドを調整するとともに、便秘などの副作用についても対応した。訪問看護とも連携し、疼痛の変化や活動状況を継続的に把握することで、症状悪化時にも早期に対応できる体制を整えた。
また、食欲低下や便秘などについても自宅で相談できるようになり、症状の程度に応じて治療を調整した。専門的な評価が必要な診療については、引き続き専門病院で受けることとし、訪問診療との役割分担を明確にした。
長女にとっては、すべての体調変化に対して病院受診を調整する必要がなくなり、就労を継続しながら本人を支援しやすい環境となった。妻についても、自宅から医療者へ相談できる体制が整ったことで、日常生活上の不安軽減につながった。
本人も訪問診療を受ける中で、自宅で必要な医療を受けられる安心感を持つようになり、住み慣れた自宅での生活を継続している。
医療対応の詳細
主病
前立腺がん(多発骨転移)
対応内容
・骨転移による疼痛の継続的な評価・オピオイドによる疼痛コントロール・オピオイド使用に伴う便秘などの副作用対策・食事摂取量および全身状態の確認・活動量、歩行状態、ADLの評価・疼痛増悪時の臨時往診・訪問看護との症状変化の共有・専門病院との併診および診療情報共有・妻、長女への病状説明と相談体制の整備
医療処置
・オピオイドによる疼痛管理
支援のポイント
・「通院できるか」だけでなく、受診前後の疲労や日常生活への影響まで確認する・本人が家族へ負担をかけたくないという思いから支援を拒んでいないか、その背景を確認する・送迎を担う家族の就労状況や負担を具体的に把握する・高齢の配偶者が同居していても、身体機能や認知機能を踏まえて実際の介護力を評価する・専門病院との関係を維持することで訪問診療を受け入れやすくなる場合は、併診を選択肢として検討する・日常の症状管理は訪問診療、専門的評価は病院と役割を整理する・疼痛増悪時に自宅から相談・診療につながる体制を早期に整える
考察
本症例は、本人が外来通院を続けること自体は可能であったものの、通院に伴う身体的負担と家族の送迎負担が徐々に大きくなっていた事例である。
訪問診療導入を検討する際には、「一人で病院へ行けるか」「歩行できるか」といったADLだけでは十分ではない。受診によって著しく疲労し、その後の生活に影響が出ている場合や、家族の支援がなければ通院を維持できない場合には、通院可能な段階であっても診療体制を見直す必要がある。
また、本人にとっては、訪問診療へ移行することで専門病院とのつながりが失われることへの不安も導入の障壁となり得る。本症例では、専門病院での定期評価を継続しながら、日常的な症状管理を訪問診療が担う役割分担としたことで、本人の安心感を保ちながら在宅医療へ移行することができた。
ケアマネジャーにとっては、本人の通院能力だけでなく、本人の負担、家族の介護力、既存医療機関との関係を含めて療養体制を評価し、「通えなくなってから」ではなく、無理が生じ始めた段階で訪問診療を検討する視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、泌尿器科、緩和ケア科・病態・症状:がん・世帯構成:夫婦のみ
在宅医療相談窓口
※在宅医療の新規相談は、担当相談員に直接お電話いただくとスムーズです。下記の該当エリアをご参照の上、ご連絡ください。
在宅医療関するお問い合わせ・ご相談はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17809/XXXX )
大塚相談員 担当エリア:緑区・東区・昭和区・西区・中川区・守山区
TEL:080-4897-4613 ( tel:08048974613 )
佐藤相談員担当エリア:熱田区・港区・中村区・名東区・北区
TEL:080-4897-4673 ( tel:08048974673 )
渡邉相談員 担当エリア:千種区・瑞穂区・南区・天白区・中区
TEL:080-3595-8467 ( tel:08035958467 )
当院の在宅医療のホームページ 詳細はこちらから ( https://w.bme.jp/38/3135/17810/XXXX )
ちくさ病院のメールマガジン!
地域の医療介護の最前線で奮闘されている皆様へ
ちくさ病院のメルマガをお読みいただきありがとうございます。このメルマガでは、在宅医療に関する情報を中心に、医療介護に関する情報やお仕事に役立つ実践的なノウハウなど、平日毎日配信しています。
メルマガの特徴
・コラム:医療介護に従事する方々のお仕事に役立つ豆知識のご紹介
・実践的なケーススタディ: 実際の在宅診療の事例紹介や多職種連携のポイントを紹介
・医療介護制度の解説: 医療介護制度の最新情報や活用のコツをお伝え
・ちくさ病院の取り組み: 地域の在宅医療を支える訪問診療体制や当院の地域への働きかけのご紹介
皆様の日々の業務に少しでもお役に立てれば幸いです。ご質問やご要望がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。共に地域の在宅医療を支えていきましょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
バックナンバー ( https://w.bme.jp/38/3135/17811/XXXX )
Instagram ( https://w.bme.jp/38/3135/17812/XXXX )
Facebook ( https://w.bme.jp/38/3135/17813/XXXX )
YouTube ( https://w.bme.jp/38/3135/17814/XXXX )
X ( https://w.bme.jp/38/3135/17815/XXXX )
このメールマガジンは、当院の医師、職員と名刺交換させていただいた方に配信しています。今後の配信を希望されない場合は下記リンクより配信停止が行えます。
配信停止 XXXX
発行元
医療法人豊隆会 ちくさ病院
在宅医療推進部
Copyright © 2019 Chikusa Hospital All Rights Reserved.