訪問診療導入事例「家族間での意思共有がうまくいかず、最終的に訪問診療終了になったケース」
2024/03/14 (Thu) 07:50
高齢者の心疾患ケアにおける複雑性と総合的アプローチ
高齢者は、多くの併存症を抱えているが、症状の原因特定が難しいことが一般的です。
たとえば、難聴や認知症、失語症などにより、病歴の聴取が困難な場合や、症状が非典型的な場合がよく見られます。心不全や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の症状として、元気がない、食欲がない、傾眠傾向であるなどの症状がしばしば現れます。
腎障害や脳血管障害などにより治療が困難な場合がある
心不全治療において、腎障害や脳血管障害による制約が多く見られます。高齢者では心不全の標準的な最適薬物治療も血圧低下、脱水、不整脈などに陥りやすく、注意が必要です。虚血性心疾患が原因の心不全の場合、早期の冠動脈血行再建術(インターベンション)が推奨されますが、腎障害のために実施できないことが多いです。また、重度の認知症を併発する場合、心不全や虚血性心疾患の治療が困難であり、薬物管理が難しいため、薬物治療が継続できないこともあります。
多くの併存症があるため、介護やケアなど多職種で介入が必要
高齢者の心不全では、感染症、貧血、腎機能障害(CKD)、脳梗塞、認知症、閉塞性肺疾患、悪性腫瘍などの全身的要因のほかに、心血管疾患(心筋虚血、心房細動など)、薬物(β遮断薬、抗不整脈薬、非ステロイド系解熱鎮痛薬など)、医療的要因(過剰輸液や輸血)、生活要因(減塩、水分制限の不徹底、肥満、服薬コンプライアンスの不良、運動過多、ストレス、うつ状態)が挙げられます。これらは心不全において独立した予後予測因子とされており、個々を精査することは病態把握や予後予測に非常に重要です。しかし、これら全てを完全に治療することでQOLを損なう可能性もあるため、総合的に治療すべきかどうかを判断し、医療以外の介護やケアも考慮することが有用です。
フレイル(虚弱)を考慮して治療することが重要
高齢者の多くの疾病でフレイルが注目されており、移動能力、筋力、バランス、運動処理能力、認知機能、栄養状態、持久力、日常生活の活動性、疲労感など多岐にわたります。フレイルは高齢者の大動脈弁狭窄症に対するTAVI治療の予後を決定すると報告されています。心不全だけでなく、高血圧や心房細動の治療や手術を受ける高齢患者でも、フレイルと治療効果との関係が重要視されています。医療経済的観点から、フレイルのない高齢、超高齢患者には、若年者と同様の治療や先進医療を行ってもよいと考えられます。ただし、フレイル自体が介入すべき対象であり、栄養管理やリハビリによる改善も高齢者の心疾患治療の目標です。
高齢心疾患患者のケア
高齢者は加齢により心筋の肥大、弁膜やその周囲組織の変性や石灰化、刺激伝導系の変性により不整脈の出現、冠動脈硬化による心筋虚血などの心不全を有病し、入退院を繰り返すことが多くなります。高齢者疾患の特徴として、複数の疾患を抱えていること、非定型的症状や意識障害・せん妄・認知症様症状など中枢神経症状による症状・徴候と重症度の乖離、社会的・心理的背景が疾患の発症や要因に関わること、薬剤の複数併用や副作用、生活機能障害(ADL低下、認知症など)が疾患の発症の背景にあること、症状や経過が典型的でないことが挙げられます。これらの理由から自覚症状に気づきにくく、受診のタイミングが遅れがちで、入退院を繰り返す原因となっています。
効果的な教育指導が必要
具体的な症状の説明や、症状が出現した際の受診の重要性を指導するとともに、電話で状況を説明し医療者の判断を仰ぐことの重要性も示唆されています。高齢患者は個性や経験により行動や考え方が異なり、教育されたことが自宅で継続されないことも問題とされています。独居や老老介護が多い中で、介護認定を受けていない、介護サービスの活用が不十分などの問題もあります。
これらを解決するためには、身体的状況だけでなく精神的状況(認知機能)や家族背景、経済状況など社会的要因を把握し、根気強く何度も説明すること、個々に合わせた方法を検討し、家族や介護者にも指導を行うことが重要です。また、看護師だけでのセルフケア支援は難しいため、多職種との医療チーム連携の強化や在宅・介護支援サービスとの連携が求められます。
ちくさ病院在宅医療ホームページ
https://w.bme.jp/38/3135/5396/XXXX
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看護師長 五藤 TEL :080-2654-2057
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編集/発行:医療法人豊隆会 ちくさ病院 在宅医療推進部
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高齢者は、多くの併存症を抱えているが、症状の原因特定が難しいことが一般的です。
たとえば、難聴や認知症、失語症などにより、病歴の聴取が困難な場合や、症状が非典型的な場合がよく見られます。心不全や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の症状として、元気がない、食欲がない、傾眠傾向であるなどの症状がしばしば現れます。
腎障害や脳血管障害などにより治療が困難な場合がある
心不全治療において、腎障害や脳血管障害による制約が多く見られます。高齢者では心不全の標準的な最適薬物治療も血圧低下、脱水、不整脈などに陥りやすく、注意が必要です。虚血性心疾患が原因の心不全の場合、早期の冠動脈血行再建術(インターベンション)が推奨されますが、腎障害のために実施できないことが多いです。また、重度の認知症を併発する場合、心不全や虚血性心疾患の治療が困難であり、薬物管理が難しいため、薬物治療が継続できないこともあります。
多くの併存症があるため、介護やケアなど多職種で介入が必要
高齢者の心不全では、感染症、貧血、腎機能障害(CKD)、脳梗塞、認知症、閉塞性肺疾患、悪性腫瘍などの全身的要因のほかに、心血管疾患(心筋虚血、心房細動など)、薬物(β遮断薬、抗不整脈薬、非ステロイド系解熱鎮痛薬など)、医療的要因(過剰輸液や輸血)、生活要因(減塩、水分制限の不徹底、肥満、服薬コンプライアンスの不良、運動過多、ストレス、うつ状態)が挙げられます。これらは心不全において独立した予後予測因子とされており、個々を精査することは病態把握や予後予測に非常に重要です。しかし、これら全てを完全に治療することでQOLを損なう可能性もあるため、総合的に治療すべきかどうかを判断し、医療以外の介護やケアも考慮することが有用です。
フレイル(虚弱)を考慮して治療することが重要
高齢者の多くの疾病でフレイルが注目されており、移動能力、筋力、バランス、運動処理能力、認知機能、栄養状態、持久力、日常生活の活動性、疲労感など多岐にわたります。フレイルは高齢者の大動脈弁狭窄症に対するTAVI治療の予後を決定すると報告されています。心不全だけでなく、高血圧や心房細動の治療や手術を受ける高齢患者でも、フレイルと治療効果との関係が重要視されています。医療経済的観点から、フレイルのない高齢、超高齢患者には、若年者と同様の治療や先進医療を行ってもよいと考えられます。ただし、フレイル自体が介入すべき対象であり、栄養管理やリハビリによる改善も高齢者の心疾患治療の目標です。
高齢心疾患患者のケア
高齢者は加齢により心筋の肥大、弁膜やその周囲組織の変性や石灰化、刺激伝導系の変性により不整脈の出現、冠動脈硬化による心筋虚血などの心不全を有病し、入退院を繰り返すことが多くなります。高齢者疾患の特徴として、複数の疾患を抱えていること、非定型的症状や意識障害・せん妄・認知症様症状など中枢神経症状による症状・徴候と重症度の乖離、社会的・心理的背景が疾患の発症や要因に関わること、薬剤の複数併用や副作用、生活機能障害(ADL低下、認知症など)が疾患の発症の背景にあること、症状や経過が典型的でないことが挙げられます。これらの理由から自覚症状に気づきにくく、受診のタイミングが遅れがちで、入退院を繰り返す原因となっています。
効果的な教育指導が必要
具体的な症状の説明や、症状が出現した際の受診の重要性を指導するとともに、電話で状況を説明し医療者の判断を仰ぐことの重要性も示唆されています。高齢患者は個性や経験により行動や考え方が異なり、教育されたことが自宅で継続されないことも問題とされています。独居や老老介護が多い中で、介護認定を受けていない、介護サービスの活用が不十分などの問題もあります。
これらを解決するためには、身体的状況だけでなく精神的状況(認知機能)や家族背景、経済状況など社会的要因を把握し、根気強く何度も説明すること、個々に合わせた方法を検討し、家族や介護者にも指導を行うことが重要です。また、看護師だけでのセルフケア支援は難しいため、多職種との医療チーム連携の強化や在宅・介護支援サービスとの連携が求められます。
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